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理念経営

「ホワイト企業大賞」表彰企業のいきいき組織づくり 【3】~「学び」が生まれる組織づくり(後半)

【カンパニープロフィール】
1970年に「道頓堀ホテル」を開業して以来、ホテル業を展開してきた株式会社王宮(本社:大阪府大阪市中央区)。現在ではブリッジホテルグループとして「道頓堀ホテル」をはじめ、「ザ ブリッジホテル心斎橋」「大阪逸の彩ホテル」「沖縄逸の彩ホテル」「天一ホール」を運営しています。約55億1千万円(2024年4月期)、従業員数約220名。

《経営理念》
誠実な商売を通して、心に残る想い出づくり
《ビジョン》
共に幸せと誇りを感じる会社
《私達の使命》
私達は日本と世界の架け橋になります

4.さまざまな「学び」の場を提供する

王宮では、毎日の朝礼も学びの場となっています。

「外部機関の朝礼冊子・ツールを活用して、各店舗の朝礼で『今日の気づき』や『今日のありがとう』を各人に発表してもらい、互いにコメントしてもらっています。さらにそれをネットの社内掲示板に投稿して、全社でシェアしています。こうした振り返りを日々の習慣とすることで、気づきの能力や感謝する力が向上し、それが人間力の向上につながると思います」(橋本さん)

人材開発分野では「経験学習」の効果が知られています。経験学習とは、日々の業務経験からの学びであり、社会人の成長は「経験学習」に大きく左右されるといわれています。経験から学ぶためには、経験の振り返りが重要です。また経験から学んだことを「記憶」ではなく「記録」することも学びの定着に役立ちます。

しかしながら、経験の振り返りや、学びの記録は、本人任せにすると日々の業務に忙殺され、疎かになりがちです。そこで会社として振り返りの場を設定したり、学びをアウトプットさせることが求められます。

その点、王宮では日単位の「小さな振り返りの場(朝礼)」と、年単位の「大きな振り返り(合宿)の場」が用意され、経験学習が促進しやすい仕組みが確立されています。さらに毎月の社員の自主勉強会も加えれば、年、月、日単位で学びの機会が用意されており、社員の学び・成長を後押ししています。

また、学びの「記録」という点でも、朝礼での学びは「掲示板への投稿」、自主勉強会での学びは「課題提出」、合宿での学びは「プレゼンテーション資料」のように記録しており、学びを定着しやすくしています。

経験学習研究の第一人者である松尾睦 青山学院大学経営学部教授は、効果的に経験学習している人の特性として、「ストレッチ(挑戦する力)」「リフレクション(振り返る力)」「エンジョイメント(やりがいを感じる力)」を指摘しています。

王宮の社員は「経験学習」についてあまり意識していないかもしれませんが、ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントの3つを発揮しやすい環境にあり、効果的に経験学習しているのではないかと推察します。

5.組織サーベイ『Fangrow』の実施

王宮では、2024年6月にタンタビーバの組織サーベイ『Fangrow』を実施しました。

(1)組織サーベイ『Fangrow』とは
『Fangrow』は、社員の「自社大好き」度合いを「自社ファン度」という指標で見える化し、未来の組織づくりに活かす組織サーベイです。社員の「自社ファン度」の数値化に加えて、「自社ファン度」を構成する個別診断項目(8項目+補助2項目)の診断結果を数値化します(5段階評価の平均値)。

(個別診断項目)
①経営理念の浸透、②経営理念の明文化、③成長と多様性の尊重、④仕事における成長とキャリア、⑤相互に理解され尊重される文化、⑥部門間連携、⑦助け合いと協力の文化、⑧他者尊重と自己開示

(補助診断項目)
ワークエンゲージメント、幸福感

(2) 王宮の強み・特長を組織サーベイの結果が裏付け
組織サーベイを集計した結果、「自社ファン度」や個別診断項目、補助診断項目のほとんどが4.0以上(5段階評価の平均)という高い数値を示しており、王宮社員の“いきいき”がサーベイ結果からも確認することができました。

個別診断項目、補助診断項目に着目すると、第1回から述べてきた、理念経営の推進、フラットな組織づくり、「学び」が生まれる組織づくりという王宮の強みが、そのまま診断結果に反映されるかたちとなりました。また、重回帰分析により、社員の「自社大好き」度合いである「自社ファン度」の高さが、仕事に対するポジティブな心理状態である「ワークエンゲージメント」の高さをもたらしていることが確認できました。

6.王宮のこれから

(1)王宮で働く自分の「なりたい姿」
岡さん、崎島さんに、今後王宮で働く自分の「なりたい姿」についてお聞きしました。

「私が目指しているのは、みんなが自由にのびのび働くことができる職場です。それを実現するために、必要であれば自分が先頭に立って率先垂範したいですし、職場の仲間がそれに向かってチャレンジするのであれば、自分は後方でしっかりサポートしてあげたいです」(岡さん)
最初に「なりたい自分」ではなく「なりたい職場」を提示するあたりが、仲間と共に成長したいと願っている岡さんらしい発言かもしれません。

「入社から丸2年が過ぎて、ようやく一通りの仕事を少しは自信を持ってできるようになりました。先輩方のご指導があってここにようやく辿り着けた実感があるので、会社や先輩方に対して少しでも恩返しできるように、自分の力を発揮して積極的に取り組んでいきたいと思っています」(崎島さん)
会社・先輩への「恩返し」は、第2回の橋本さんの言葉を借りれば、「恩送り」することかもしれませんね。

(2) 王宮が今後目指す姿
最後に、王宮が今後目指す姿について、橋本さんにお尋ねしました。
「フラットな組織を作りながら、一人ひとりが長所を活かして、組織に貢献してくれるのが理想です。スタッフ一人ひとりが異なる個性を持っているので、それぞれ個性に合った能力を発揮してもらいたいですね」(橋本さん)

また、一人ひとりの個性の発揮と同時に、スタッフ同士のつながりも重視しています。
「部署を超えた交流、勉強会、合宿、簡単なレクリエーションなど売上に直接貢献しないですが、スタッフ同士のつながりを強くする取り組みは大切にしたいですね」(橋本さん)

以上3回にわたって、株式会社王宮様の“いきいき”を紹介してきました。「日本と世界の架け橋となる」という使命に共感し、社員がいきいきと働いている様子が伝わったのではないかと思います。

社員がいきいきと輝く舞台を用意するために、経営者が差別化されたビジネスモデル、良い組織、良き社風を緻密に作り上げてきたことは、多くの中小企業の経営者にとって、いきいき組織づくりのヒントとなったのではないでしょうか。

また、社員の課題レポートのコメントに毎月30時間をかける等、橋本さんの経営者としての情熱に感服された方も多いと思います。経営者の熱量の大切さを再認識できました。

橋本さん、岡さん、崎島さん、貴重なお話ありがとうございました。

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