人とビジネスのいきいきをデザインする

風土改革

株式会社ニチレイフーズ様
「ハミダス活動」でいきいき組織づくり【2】「あぐら」と「動画メッセージ」による社内風土改革(前半)

※「あぐら」の様子
【カンパニープロフィール】
ニチレイグループの加工食品会社。冷凍食品では業界最大手であり、冷凍食品をはじめとした加工食品の開発から製造・販売を行っています。売上高2,909億円(2023年度)、従業員数9,942名(2024年3月31日現在)。

《企業コンセプト》
くらしに笑顔を

《ミッション(存在意義)》
ニチレイフーズは人々のくらしを見つめ、食を通じて、健康で豊かな社会の実現に貢献します。

《ビジョン(目指す姿)》
私たちは、常に独自能力を磨き、卓越した価値を創造することで、世界で最も信頼される食品企業を目指します。
「お客様・取引先に」
誠実に向きあい、独自の価値ある商品・サービスを提供し続けます。
「従業員に」
風通しが良い活性化された職場を提供します。
「社会・投資家に」
広く好感と信頼を寄せられる、グローバルに展開する企業として成長します。

《モットー(行動指針)》
ミッション・ビジョンを実現するための従業員の行動指針が「ハミダス」です。

独自活動「ハミダス」で社内風土改革に成功した株式会社ニチレイフーズ様の“いきいき”を紹介する3回シリーズ。第2回では、社内風土改革の中核活動である「あぐら」と「動画メッセージ」を紹介します。

1.経営層と従業員の対話の場「あぐら」の開催

第1回でも述べたように、「ハミダス」の背景には当時の社内コミュニケーション不足、連携不足がありました。そこで風通しの良い職場風土づくりのための取り組みとして、経営層と従業員の対話の場『あぐら』を開催することにしました。現在では、1回につき参加人数10名前後で、約2時間かけて実施されています。

(1)「車座集会」から「あぐら」へ
「あぐら」の開催について、池田さんは以前に開催していた「車座集会」から教訓を得ていたようです。
「私の社長就任以前にも、年に1回事業所を訪問して経営者が従業員と話をする『車座集会』という会が開催されていました。個人的には『車座集会』という名称がすごくいいなと思っていました」(池田さん)

ところが、「車座集会」の性格が次第に変わっていったようです。 「だんだん会の性格がトップの方針説明に変わっていきました。何百人もいる工場や何十人もいる支社へ行って、全員集めて全員参加でトップが話をすると、どうしても一方通行になります。1時間近く話をして、3、4人から質問を受ける。質問する人も大体決められていて、工場長はその質問内容を知っている。儀礼的な『車座集会』を見て、もうやめよう、変えようと決めました」(池田さん)  「車座集会」での反省から、対話ができる小規模単位での「あぐら」の開催を決めました。 「対話ができるように小規模単位にしようということになり、部署単位で『あぐら』を始めました。最初は20人ぐらいでやっていのですが、20人でも当たる人、当たらない人が出てくるので対話になりません。そこは試行錯誤して10人に落ち着きました。午前、午後でそれぞれ10人というパターンもあります。参加メンバーの人選は現場に任せていました」(池田さん)

※ 株式会社ニチレイフーズ 顧問(元代表取締役社長) 池田 泰弘さん

ところが、「車座集会」の性格が次第に変わっていったようです。
「だんだん会の性格がトップの方針説明に変わっていきました。何百人もいる工場や何十人もいる支社へ行って、全員集めて全員参加でトップが話をすると、どうしても一方通行になります。1時間近く話をして、3、4人から質問を受ける。質問する人も大体決められていて、工場長はその質問内容を知っている。儀礼的な『車座集会』を見て、もうやめよう、変えようと決めました」(池田さん)

「車座集会」での反省から、対話ができる小規模単位での「あぐら」の開催を決めました。
「対話ができるように小規模単位にしようということになり、部署単位で『あぐら』を始めました。最初は20人ぐらいでやっていのですが、20人でも当たる人、当たらない人が出てくるので対話になりません。そこは試行錯誤して10人に落ち着きました。午前、午後でそれぞれ10人というパターンもあります。参加メンバーの人選は現場に任せていました」(池田さん)

「あぐら」の様子

※「あぐら」の様子
(出所)株式会社ニチレイフーズHP「大切にしている活動」
https://www.nichireifoods.co.jp/corporate/hamidasu/inner.html

(2)「あぐら」が定着するまで~心理的安全性と社長の本気度
「あぐら」初年度の苦労を池田さん、吉野さんが語ってくれました。
「初年度は100回実施しました。1回2時間で実施します。最初に約20分、池田さんがミッション、ビジョン、会社の思いなどを話し、その後は皆さんの対話をひたすら聞くという会です。そのファシリテーター(進行役)が私で、社長が話したあとに『皆さんどうですか』と聞くのですが、みんな喋らないんです。最初はその時間が本当に針のムシロでした」(吉野さん)
「警戒しているから、そうそう誰も喋らない。全然信頼されていないというか、最初はぽっと社長になった人間が突然来て、みんな『どこの池田さんだ』って感じでした」(池田さん)

参加者がいろいろ話してくれるまで3年かかったそうです。
「1年目は喋らないで、2年目になると『今年も来るんだね』って感じになって、3年目になると、参加者が『いろいろ喋っても飛ばされたり、評価に影響がないんだ』という心理的安全性の担保を認識し、ようやくいろいろなお話をしてくれるようになりました」(吉野)

※株式会社ニチレイフーズ ハミダス推進部長 吉野 達也さん

※ 株式会社ニチレイフーズ ハミダス推進部長 吉野 達也さん

社長の本気度が参加者に伝わったのが大きい、と吉野さんは言います。
「みんなが話すようになったのは、心理的安全性に加えて、社長の本気度もあると思います。当初は『どうせまた思いつきでやっているから、来年は来ないでしょ』って見くびられていたと思います。それが2年、3年と継続させることで、みんなが『え~っ、本当に来るんだ。これは本気かもしれない』と思い、『じゃあ、ちょっと何か喋るか』って感じになったと思います。みんながあきらめて『これ毎年続くんだ。ちょっと喋ろうか』というのが本音かもしれません」(吉野)

※「あぐら」の様子

※「あぐら」の様子
(出所)株式会社ニチレイフーズHP「大切にしている活動」
https://www.nichireifoods.co.jp/corporate/hamidasu/inner.html

(3)「あぐら」はラスト30分が勝負!
「あぐら」の運営面での工夫について、吉野さんに教えていただきました。まずテーマ設定です。
「最初は真面目なテーマを設定していました。そもそもミッション・ビジョン浸透だったので、『ミッション・ビジョンについてどう思いますか』と問いかけたのですが、そのテーマではみんな喋れないんです。みんなが普段は考えてもいないことなので」

そのため、初年度の途中から問いかけを変更しました。
「だから初年度の途中から、『皆さんの職場のコミュニケーションはどうですか』という問いかけにしました。当時、従業員同士のコミュニケーション機会が圧倒的に少なかったので。隣で仕事をしているのに全く喋らないとか、プライベートのことも知らないっていうのが多かったんですね。そこで、まずお互いを知ろうよって自己紹介するようになりました」

テーマの事前アナウンスや、参加者の階層分けなどにも配慮しました。
「最初の頃、『テーマを事前に教えてほしい』と盛んに言われました。しかしながら、教えてしまうと、みんな答えを用意してきてしまうので、それは違うかなと。『いや、そんなに重いテーマはありません』と言って、テーマは開示しないようにしました」(吉野さん)
「やっていくうちに、階層は分けなきゃいけないことに気づきまして、やはり部署長がいると若い人は喋りづらいんですよ。だから若い人のグループ、マネージャーのグループに分けるようにしました」(吉野さん)

「あぐら」はラスト30分が勝負だと吉野さんは断言します。
「『あぐら』は2時間という設定も大切です。人って、1時間半までは黙っていられるのですが、残り30分は黙っていられなくなります。それで結構ミソで、そこで何かポツポツ自分の気持ちを吐露する人が出てくるんです。何回もやっていくうちに『ラスト30分が勝負』と実感するようになりました。だから1時間半は前座なんです。それまでに場を温めておいて、ラスト30分で皆さんが何を考えているのかを聞くというのが必勝パターンです」(吉野さん)

また、話がネガティブな方向へ進んだときにも工夫していました。
「ネガティブな話になったときは、『この工場を将来どういうふうにしていきたいと思いますか』、『この会社で何か実現したい夢は何ですか』、のように意図的にポジティブなテーマで最後終わるようにしてます」(吉野さん)

「あぐら」はラスト30分が勝負!

(4)横の対話が生まれることが一番良い
「あぐら」は経営層と従業員の対話の場ですが、実は従業員同士の横の対話が生まれることが一番良いと、吉野さんは説明してくれました。
「一番良い形は、横同士(従業員同士)で対話が生まれることです。どうですかって聞いて参加者が答えたら、横から『自分もそう思っていた』『自分はこうなんだよね』のような対話が生まれるパターンです」

そのため、横の対話が生まれやすいような問いかけを行っています。
「先に述べたように、1年目は『コミュニケーションはどうですか』という聞き方でしたが、それ以降は『普段お仕事してる中で今思ってること感じてることありますか』って、それだけなんです。そこで参加者から一言出たときに、それをテーマに、いろいろな人に聞く。例えば『自分は人材育成について、○○のように思っている』という話が出たら、『それについて皆さんどうですか』という感じです」(吉野)

そのため、社長の基本スタンスは傾聴となります。
「基本的に社長は傾聴です。やはり社長が良いとか悪いとか言ってしまうと、もうそれ以上対話にならないので」(吉野さん)
「最初の15分から20分は、一方的に私の思いをお話して、あとは基本、全く口を挟まない。黙ってメモを取るだけということにしましたね」(池田さん)

横の対話の促進という意味で、工場での「あぐら」では懇親会も設定しています。
「工場では終わった後に、懇親会を設定しています。あぐら参加者に部署長も加わります。実は我々は1時間で抜けて、その後は部署の懇親会にしてもらっています。お金だけ払って我々は引き上げます」(池田さん)

横の対話が生まれることが一番良い

(5)「あぐら」は陳情・要望を聞く会ではない
「あぐら」での対話内容は経営者がメモをとるのみで、議事録などは作成されません。
「『あぐら』の内容は池田さん(社長)がメモを取っています。事務局の私が議事録などを作成することはなく、その内容を会社幹部と共有することもありません」(吉野さん)

メモを取っても、その内容の活かし方は公開しなかったと池田さんは言います。
「私の中だけでメモを取って、そのたまったメモをどのように活かすかというのは皆さんには言っていません。『あぐら』各回の終わりにも、これはこのように返答しますということも言いません。そこは聞きっぱなしで帰ってきました」(池田さん)

「最初から陳情・要望を聞く会ではないと位置づけていました。したがって、『社長こういうふうにしてください』『こんなことで困っているから何とかしてください』といった会話も一切なしです。」(池田さん)
「苦情とか、不平不満の会にしたくありませんでした。テーマの降ろし方も『なんか今職場で抱えてる課題ありますか』とすると、不平不満が出てきてしまいます。一方、『何か考えていることありますか』とすると、そういう話になりづらいので、その部分はかなり気をつけています」(吉野さん)

(6)メモの活かし方を公開しないことで改革が機能していた
メモの活かし方は公開しなかったものの、実際にはメモに基づき、さまざまな施策を講じていました。
「全国で聞いてまわり、メモがたまる中で共通の課題・問題点は浮かび上がってくるので、実際にはいろいろな施策を講じていました。ただし、社長の任期中の6年間は『こういうことに活用しました』という種明かしはしませんでした。種明かしをしたのは、会長になってからですね」(池田さん)

メモの活かし方を公開しないことで改革が機能していたことを、吉野さんが補足してくれました。
「『あぐら』も本当はいろいろな施策に反映されているんです。たとえば新しい部署を作るとか、でもそれをあえて言っていない。経営者の視点として、自分が打った施策が現場でどうなっているのかというのを、したたかに確認していたと思いますし、それがうまくいっていなかったら、さらに改善を重ねていくという、これはすごく機能していたんじゃないかと思いますね。社長がここ(本社)にずっと居たらわからないですよ」(吉野さん)

メモの活かし方を公開しないことで改革が機能していた
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