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経営理念

いきいき組織づくりのキーワード 「経営理念」

キーワードから「いきいき組織づくり」を考えるシリーズ。今回のキーワードは「経営理念」です。

1.「経営理念」とは

「経営理念」は「企業理念」とも呼ばれ、企業経営の根幹となる考え方を定めたものです。その定義、範囲、解釈は多様であり、「企業によってさまざまな経営理念のカタチがある」と捉えるべきでしょう。

経営理念は「パーパス」「ミッション」「ビジョン」「バリュー」等の形で表現されることが多くなっています。「パーパス」「ミッション」「ビジョン」「バリュー」には、絶対的な定義があるわけではありません。したがって、それぞれ何をさすのかは企業によって異なりますが、一般的な概念を示すと以下のとおりです。

 

パーパス
(Purpose)
社会における自社の存在意義(自社はなぜ存在するのか)
→自社ビジネスを通して「社会をより良くしたい」という社会貢献に重きを置く
ミッション
(Mission)
企業の使命(自社が果たすべき使命は何か)
→不変的な企業の在り方を示すもの
※パーパス的な意味合いでミッションを制定している企業もある
ビジョン
(Vision)
企業の将来像(自社が将来どうなっていたいか)
→自社の将来像ではなく、自社が実現させる社会の将来像を示すケースもある
バリュー
(Value)
企業が重視する価値観(自社がどのような価値観を大切にしているか)
→これまで受け継がれてきた企業DNAや行動指針など

従来は「ミッション」「ビジョン」「バリュー」が経営理念の典型として示されてきましたが、近年ではこれに「パーパス」が加えられるようになりました。企業に対する社会課題の解決への要請が高まる中で、「ミッション」を社会課題解決の観点から捉え直すものとして「パーパス」を制定するケースが見られます。

ここでは「パーパス」「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の4つを取り上げましたが、それ以外の要素を経営理念として定めている企業もあります。

2.経営理念の体系化

経営理念を策定している企業の多くは、「パーパス」「ミッション」「ビジョン」「バリュー」等を組み合わせた体系として経営理念を提示しています。したがって、経営理念の策定は、理念体系の構築を含むものとなります。

いくつか具体例を示します。

事例1:トヨタ自動車株式会社

Mission わたしたちは、幸せを量産する。

だから、ひとの幸せについて深く考える。
だから、より良いものをより安くつくる。
だから、1秒1円にこだわる。
だから、くふうと努力を惜しまない。
だから、常識と過去にとらわれない。
だから、この仕事は限りなくひろがっていく。
Vision 可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える。

不確実で多様化する世界において、
トヨタは人とモノの「可動性」=移動の量と質を上げ、
人、企業、自治体、コミュニティができることをふやす。
そして、人類と地球の持続可能な共生を実現する。
Value トヨタウェイ
ソフトとハードを融合し、パートナーとともにトヨタウェイという唯一無二の価値を生み出す。

【ソフト】
よりよい社会を描くイマジネーションと人起点の設計思想。
現地現物で本質を見極める。
【ハード】
人とモノの可動性を高める装置。
パートナーとともにつくるプラットフォーム。
これらをソフトによって柔軟に、迅速に変化させていく。
【パートナー】
ともに幸せをつくる仲間(顧客、社会、コミュニティ、社員、ステークホルダー)を厳重し、それぞれの力を結集する。

(出所)https://global.toyota/jp/company/vision-and-philosophy/philosophy/

事例2:ソニーグループ

Purpose
存在意義
クリエイティビティとテクノロジーの力で、
世界を感動で満たす。
Values
価値観

夢と好奇心
夢と好奇心から、未来を拓く。多様性
多様な人、異なる視点がより良いものをつくる。高潔さと誠実さ
倫理的で責任ある行動により、ソニーブランドへの信頼に応える。持続可能性
規律ある事業活動で、ステークホルダーへの責任を果たす。

(出所)https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/purpose_and_values/

事例3:ファーストリテイリング

ステートメント ─ Statement 服を変え、常識を変え、世界を変えていく
ミッション ─ Mission ファーストリテイリンググループは─

  • 本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します
  • 独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します
私たちの価値観 ─ Value
  • お客様の立場に立脚
  • 革新と挑戦
  • 個の尊重、会社と個人の成長
  • 正しさへのこだわり
私の行動規範 Principle
  • お客様のために、あらゆる活動を行います
  • 卓越性を追求し、最高水準を目指します
  • 多様性を活かし、チームワークによって高い成果を上げます
  • 何事もスピーディに実行します
  • 現場・現物・現実に基づき、リアルなビジネス活動を行います
  • 高い倫理観を持った地球市民として行動します

(出所)https://www.fastretailing.com/jp/about/frway/

このように理念体系は、企業によって異なってきます。したがって、自社の状況に合わせた理念体系の構築が求められます。

 

理念体系は企業によって異なる

整理すると、経営理念は理念体系、各要素の定義なども含めて百社百様のものです。その意味で、自社と他社を分かつものであり、「自社らしさとは何か」が経営理念・理念体系に凝縮されているはずです。したがって、「(一般的に)経営理念はどうあるべきか」という形式面よりも、「自社に相応しい経営理念は何か」という実質面を重視すべきでしょう。

3.効果的な経営理念の策定・浸透のメリット

いきいき組織づくりの観点で考えた場合、効果的な経営理念の策定・浸透には、以下のような効果(メリット)を期待できます。最初の視点は、心理学で「情動感染」と呼ばれる現象から、「自社ファン度」ののいきいき組織づくりへの貢献を説明します。

効果的な経営理念の策定・浸透のメリット(いきいき組織づくりへの貢献)

3-1. 従業員エンゲージメントの向上

経営理念に対して従業員が共感すれば、自分の仕事が組織の大きな目的や社会的な価値とどのように結びついているかを理解しやすくなると同時に、自分が組織の一員として重要な役割を果たしていると感じ、エンゲージメントが向上します。エンゲージメントの向上は、従業員の自社に対する誇りや、仕事に対するやりがいを高めます。

3-2. 組織の一体感の醸成

経営理念を体系的に整備し、それを全社で共有することで、企業全体が一貫した方向性を持つことができます。全員が同じ目標に向かって進むことができ、組織の動きが一体感を持つようになります。経営理念という「合言葉」があることで、従業員同士や部門間の連携や協力が生まれやすくなります。

3-3. 従業員の自律的行動の促進

経営理念を体系化することは、従業員に自律的行動を促進するための強力な基盤を提供します。各従業員にとって、経営理念が「この状況で自分は何をすべきか」という判断基準となり、上司からの指示を待つことなく自律的に行動できるようになります。その結果、従業員の責任感が高まると同時に、高い成果を上げやすくなります。

4.経営理念の課題~経営理念のアップデート

経営理念が策定されていない企業や、経営理念が形骸化している企業では、経営理念の策定・アップデートが求められます。ここでは特に経営理念のアップデートを取り上げたいと思います。

4-1. 経営理念のアップデートの必要性

経営理念を策定しているものの形骸化している企業や機能不全となっている企業は、意外に多いのではないでしょうか。いくつか例示します。

(経営理念が形骸化している状況)

  • 以前の経営者が策定した経営理念であり、現経営者の経営哲学と乖離している
  • 経営理念の制定から年数が経ち、現在の事業実態に合わなくなってきている
  • 従業員の経営理念に対する認知度・理解度が低く、従業員が経営理念の話をすることはほとんどない
  • 経営理念が理想的すぎるため、現実味がなく誰も実行可能なものだと思っていない
  • 経営理念と実際の組織文化が大きく乖離している

あるいは形骸化まで至っていないが、なかなか思うように経営理念が機能していないと感じている企業もあるでしょう。

(経営理念が思うように機能していない状況)

  • 経営理念が抽象的すぎて、従業員が実行に移すことが難しい
  • 理念体系が複雑すぎて、従業員が実行に移すことが難しい
  • 従業員が経営理念を理解しているが、共感していない(経営理念にワクワクしない)
  • 従業員が経営理念を理解しているが、「自分事」になっていない
  • 従業員が経営理念を自分の仕事・行動に落とし込むことができない

上記のような状況の企業おいては、経営理念の全面的あるいは部分的なアップデートが必要かもしれません。

たとえば、上記の「経営理念が抽象的すぎて、従業員が実行に移すことが難しい」「従業員が経営理念を自分の仕事・行動に落とし込むことができない」という課題を抱えているのであれば、「2.経営理念の体系化 事例3:ファーストリテイリング」のように、「行動規範 Principle」を既存の経営理念に追加することで、従業員が「どのように行動すべきか」をイメージしやすくなります。

4-2. 経営理念の策定・アップデートの2つのアプローチ

経営理念の策定・アップデートにおいては、大きく2つのアプローチがあります。

 

トップダウン・プローチ
経営者の思いを経営理念に反映させ、それを上意下達するもの
ボトムアップ・プローチ 経営者、従業員が一体で作り上げるもの(従業員の思いをうまく吸い上げて、経営者の思いと融合・調和させる)
経営理念の策定・アップデートの2つのアプローチ

経営理念の策定の一般的なイメージは、トップダウン・プローチかもしれません。確かに、経営者の強力なリーダーシップが求心力となるような企業においては、トップダウン・プローチも有効だと思います。一方でトップダウン・プローチの場合、上意下達が従業員に「やらされ」感を抱かせるおそれもあります。

以前の記事で述べたように、経営理念を重視する経営手法である「理念経営」では、従業員が経営理念に共感・共鳴していることが成功の鍵となります。すなわち、従業員が経営理念に共感・共鳴するほど、経営理念が浸透し、経営理念に基づく行動を起こしやすくなります。その意味で、従業員の思いをうまく吸い上げるボトムアップ・プローチの方が、従業員の共感・共鳴を得やすいといえるでしょう。

以上、経営理念の体系化や経営理念のアップデートを見据えつつ、経営理念のいきいき組織づくりへの貢献について述べてきました。

あなたの会社も経営理念を体系化・アップデートして、従業員の共感・共鳴を呼び込みませんか。

(著者:タンタビーバ パートナー 園田 東白)

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