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経営改革

いきいき組織紹介~株式会社メンバーズ 様
「らしさ」を大切にする企業のいきいき組織づくり【3】 急拡大する組織の人材マネジメント

早川さん、佐藤さん、貴重なお話ありがとうございました。

デジタル人材の伴走によるDX現場支援事業で急成長を遂げている株式会社メンバーズ様の“いきいき”を紹介する3回シリーズ。ラストとなる第3回では、早川さんのお話しを中心に、急拡大する組織の人材マネジメントというテーマから掘り下げたいと思います。

(インタビューへのご協力)
株式会社メンバーズ  執行役員 早川 智子さん
株式会社メンバーズ  ピープル&カルチャー本部組織開発室組織開発グループ  グループ長  佐藤 瀬奈さん

1.急拡大する組織の人材マネジメントで何が起こっているのか

(1)管理職の量的確保・質的充実の必要性

第1回でも述べたように、メンバーズでは6年で社員数が約3倍となり、現在では3千名規模の組織となっています。こうした急拡大する組織の人材マネジメントについて、早川さんにお尋ねしました。

「去年から『10プラス・プロジェクト(管理職比率10%を目指す)』と呼ぶ管理職の育成に取り組んでいます。また、管理職比率を10%に引き上げていくにあたり、プレ管理職層としてのリーダーの積極的な抜擢も行っています。若手社員が増えていくなかで、その若手を引き上げていく人を量的に増やすと同時に、その質を高めていくことが喫緊の課題だと思います」(早川さん)

株式会社メンバーズ 執行役員 早川 智子さん

新卒の大量採用で組織規模が急拡大すると、当然ながら相対的に管理職の人数が不足がちになります。こうした状況では管理職に対する負荷が大きくなるので、管理職の量的確保・質的充実が急務となります。

管理職の量的確保・質的充実の必要性

(参考)シェアード・リーダーシップ~管理職への負担軽減の処方箋
管理職の負担増大は、メンバーズに限らず急成長企業に共通する人材マネジメントの課題です。こうした状況への処方箋の一つとして今日注目されているのが、、「シェアード・リーダーシップ(SL:Shared Leadership)」と呼ばれるリーダーシップです。

従来のリーダーシップの概念は、「特定の一人がリーダーシップを執る」ことが前提の「垂直的な関係」のリーダーシップでした。それに対してシェアード・リーダーシップは、「グループの複数の人間、時には全員がリーダーシップを執る」ことで、それぞれのメンバーが時々にリーダーのように振る舞い、他のメンバーに影響を与え合う「水平的な関係」のリーダーシップです。

シェアード・リーダーシップの発揮は、管理職に集中している負担を他メンバーと分担するため、管理職の負担軽減につながります。同時に、若手・中堅メンバーのリーダーシップ発揮が「管理職への予行演習」の機会となるため、管理職の育成にも寄与します。

メンバーズで明示的にシェアード・リーダーシップの取り組みが実施されているわけではありませんが、同社では全社員がリーダーシップを持ち、全社の経営に参画していく「全員参加型経営」を目指しています。その意味で、シェアード・リーダーシップの考え方は「全員参加型経営」の実現にも寄与するものだといえるでしょう。

(参考)シェアード・リーダーシップ~管理職への負担軽減の処方箋

(2)新入社員の育成体制をどうするのか

新入社員が急増するなかで、新入社員の育成体制をどのようにするのかという課題にも直面しています。
「少し前までは若手社員が新入社員のメンター(教育担当)となるという構図になっていたのが、ここ数年は新入社員の自己成長を重視した育成体制となっています」(早川さん)

この育成体制の違いは、「先輩が教えることで仕事ができるようになる(メンターによる教育)」と「本人に任せることで仕事ができるようになる(自己成長)」のように表現できるかもしれません。実際の育成現場は、このどちらか一方の実践というわけではなく、両者の割合をどのようにするかということでないかと思われます。

新入社員の育成から少し逸れますが、2年目社員が新入社員のメンター役となることで成長するという話も印象的でした。
「以前の育成体制での話になりますが、新入社員に教えることで2年目メンターが成長するという側面があります。1年目の後半になると、『2年目になったら、今度はあなたがメンターですよ』と言われるので、1年目の終わりが近づくにつれて、少しずつ責任感が芽生えてくるようです。そして、3月末で教わる立場を卒業することになり、周囲からも『面倒をみるのはもう終わりだよ』と言われてしまいます。4月に入ると一転して教える立場になります。当然、教えることは初めてになりますが、それでも自分なりに工夫もするので、その努力や工夫が成長につながると思います」(早川さん)

人に教える行為には、「教えることで学ぶ(Learning by Teaching)」という側面があります。新入社員に教えるためには、手本を示したり、相手が理解できるように工夫して説明する必要があります。その準備として業務知識・ノウハウの棚卸しが求められ、それが教える人自身の知識・ノウハウを整理する良い機会となります。

新入社員の育成体制をどうするのか

育成においては、「教わる側が成長する」という視点に加えて、「教える側も成長する」という視点を持つことも大切かもしれませんね。

2.経営層とのコミュニケーション施策

どのような組織でも規模が大きくなると、経営層と社員の間に距離感ができてしまい、なかなかコミュニケーションをとることが難しくなります。経営層と社員のコミュニケーション不足は、社員のエンゲージメント低下、経営と現場のギャップ発生(経営層は現場のことを知らない、社員は経営層の思いを知らない)、会社としての一体感の低下といった問題を招きます。

(1)タウンホールミーティングの実施

メンバーズにおいても経営層と社員の間の距離感が課題となり、その解消に努めています。
「組織が大きくなったことやコロナ禍の影響で、経営層と社員の間に距離感ができてしまいました。その解消策として、経営層と社員の直接対話の機会である『タウンホールミーティング』を実施しています。これには社長および執行役員が参加し、拠点単位で実施しています。2023年〜2024年は全国で16回、2025年は開催拠点を増やし、全国で21回実施しました」(早川さん)

社員のみならず、課長層との距離感の解消にも取り組んでいます。
「一般社員に加えて、経営層と課長層以上の管理職も以前より距離が遠くなったと感じていて、経営側から見ると、現場で起きている管理職の課題をキャッチしづらくなりました。その解消策として、社長と課長層以上の管理職の座談会を開催しています。基本は社長と課長5名で、そこに経営層からもう一人加わることもあります。現在は月3回程度実施しています」(早川さん)

(2)全体会(社長や経営層による動画配信)

しかし、経営層との直接コミュニケーションには限界があるので、それを補完するコミュニケーション施策も実施しています。
「加えて、直接対話で経営層が3千名近い社員全員と接点を持つことは難しいので、社長の思いや事業で大切にしていることや、経営で現在進捗していることなどを、月2回配信しています。単に、経営に関する決定事項や情報を流すだけではコミュニケーションにならないので、社長や経営幹部の人となりも含めて、社員に興味を持ってもらえる刺さる情報や、持ち帰る材料を提供するというスタンスで取り組んでいます」(早川さん)
第2回でインタビューさせていただいた佐藤さんが、現在、この全体会を担当しています。

全体会については、社員にきちんと視聴されるように、配信方法も工夫しています。
「以前は時間を固定せずに『1週間のうちに見てください』といった設定でした。しかし、いつ見てもいいにしてしまうと、結局は見なくなってしまいます。そこで時間を固定して、『この時間に会社の大事な情報を配信しています』というライブ配信に切り換えました。また、配信をチームで視聴してもらい、その内容についてチーム内で対話してもらうことで、各社員のなかに内容が残るような工夫もしています」(早川さん)

経営層とのコミュニケーション施策

3.ミッション、ビジョンの仕事への落とし込み

第1回でも述べたようにメンバーズの社員の多くは、そのミッション、ビジョンに惹かれて入社しており、ミッション、ビジョンへの共感度は高い状態にあります。その一方で、そのミッション、ビジョンを自分の仕事に落とし込む部分に課題がある社員が存在します。現在、この課題解決に向けたさまざまな施策を講じています。

(1)ミッション・ビジョン採用の強化

第1回でも述べたように、メンバーズの人材マネジメントの起点となるのが「ミッション・ビジョン採用」です。メンバーズのミッション、ビジョンに共感する人材を採用することで、入社後のミスマッチが生じにくくなると同時に、ミッション、ビジョンを踏まえた自らの仕事の意味づけを行いやすくなります。

さらにミッション、ビジョンの仕事への落とし込みを円滑にするため、、2023年4月に新行動指針「Members Standard」を策定しました。これはVISION2030の実現に向けた以下の9つの指針です。

新行動指針「Members Standard」

  • 誠実さをもって心豊かな社会を創る
  • ラストマン精神を持つ
  • 自分自身を日々アップデートする
  • スピードにこだわり価値を最大化する
  • カスタマーサクセスを愚直に追求する
  • 顧客と一緒に泣き笑う
  • 最高のユーザー体験を創出する
  • 異能を活かした成長し続けるチームを作る
  • 1byteから世界を変える

(出所)株式会社メンバーズ ニュースリリース(2023年4月25日)
https://www.members.co.jp/company/news/2023/0425.html

(2)Social Value Award・Social Value Meetingの実施

ミッション、ビジョンの繋がりを醸成する場づくりも積極的に行っています。

「Social Value Awardというイベントも実施しています。これは年に一回、全国の社員が集合して、VISION2030の実現につながる、社会課題の解決を体現している実績、活動をチーム単位でプレゼンテーションしてもらい、社員投票も含めて全社員に最も共感された取り組みをSocial Value Awardとして表彰するものです。さらにSocial Value MeetingではAwardで表彰されたチームのプレゼンを聞いて、見て、自分たちのチームに取り入れられることや、できることを話し合い、各チームの今後の活動につなげるワークショップを実施しています」(早川さん)

(3)ミッション・ビジョン研修(Members Quest)の実施

ミッション、ビジョンを社員一人ひとりの仕事とすり合わせるための研修も実施しています。
「Members Questというミッション・ビジョン研修を実施しています。全社員参加のリアルな集合研修であり、拠点単位で実施しています。東京は会場によって200人ぐらいまでの単位に分けましたが、部門はあえて『ごちゃまぜ』にしています。時間は半日、3~4時間です。社員一人ひとりが自分事として言語化してもらい、メンバーズのミッション、ビジョンと繋げてもらう取り組みなのですが、そこで気づきを得る社員も多いと思います」(早川さん)

Social Value Meetingはチームレベルのミッション、ビジョンのつながりを醸成する、Members Questは社員個人レベルのミッション、ビジョンのつながりを醸成する、という位置づけになります。

ミッション・ビジョン研修(Members Quest)の実施

4.メンバーズ「らしさ」×自分「らしさ」

メンバーズの“いきいき” について、早川さんにまとめていただきました。
「当社の場合、ミッション・ビジョン採用を重視しており、どの社員も大なり小なり社会課題の解決につながるクリエイティブをやりたい、エンジニアリングをやりたいと考えて入社してきます。これは最初から会社のやろうとしていることと、各社員がやりたいことの重なりが大きい状態です。そのため、一人ひとりのやりたいことが否定されることもないし、お互いのやりたいことへの共感度も高いと思います。その意味で、心理的安全性の高いチームができ、20代、30代の社員が、自分らしく働くことができていると思います。自分らしさを“出そう”と意識しなくても、ナチュラルに自分らしさを“出せる”雰囲気や環境があるんじゃないかなと思います」(早川さん)

自分らしさの表現について、今回一緒にインタビューした佐藤さんを引き合い出して説明してもらいました。
「例えば、佐藤さんは採用担当でしたが、一般にイメージされる採用担当者と比較して、服装なども含めてかなり個性的です(笑)。でも佐藤さんが特殊なわけではなく、個性的な社員がたくさんいるし、会社としてそれが駄目だとも言っていません。もちろん対外的な信頼関係の構築などを考えてTPOに配慮することが大前提ですが、そのうえで一人ひとりが自分らしさを表現してもらうのはいいのかな、と思っています。」(早川さん)

メンバーズは「デジタルクリエイターの幸せ」を第一に考える文化が醸成されており、そうした文化と自分らしさの追求が結びついているようです。
「クリエイター、デザイナー、エンジニアを積極採用するようになってから、『デジタルクリエイターの幸せ』という文化が浸透してきて、そのなかで自分らしさを大切にする社員が増えてきたのだと思います。(第2回の記事で)佐藤さんが『仕事とプライベートを切り分けるものではない』という話をしていたのも、自分らしさの一つだと思います」(早川さん)

メンバーズでは、ミッション、ビジョンなどの明文化されているものだけではなく、明文化されていない暗黙知としてのメンバーズ「らしさ」も大事にしています。
「『らしさ』についていえば、メンバーズ『らしさ』もとても大事にしています。たとえば、何か制度の変更を検討する場合、『ここにメンバーズらしさは入ってるか』という発言はよくあります。それは明確にテキスト化されているような形式知ではなく、あくまで暗黙知なのですが、社会課題解決のベクトルと合致するかとか、(社員3千名以上になっても)そこにベンチャーマインドはあるのか、といった要素が『らしさ』に入ってくると思います」(早川さん)

このように、社員一人ひとりの自分「らしさ」と、組織としてのメンバーズ「らしさ」の同時達成が、メンバーズという組織・人材の“いきいき”につながっているのだと思います。

メンバーズ「らしさ」×自分「らしさ」

5.インタビューを終えて~メンバーズのミッション・ビジョンに感じる「新しさ」

今回、いろいろな話をお伺いして、特に印象的であったのがミッション・ビジョンの発想の「新しさ」です。最後にもう一度触れておきたいと思います。

多くの日本企業では、ミッションやビジョンを検討する際に、「自社が~することで、社会が~になる」のように発想することが多いと思います。これは自社ビジネス起点のアプローチであると同時に、現行ビジネスの延長線上に将来の社会や自社の姿を描くフォアキャスト的視点であると説明できます。

それに対して、メンバーズのミッション、ビジョンは、「社会が~となるために、メンバーズが~する」という(理想の)社会起点のアプローチで策定されています。それは、未来のありたい社会の姿から逆算して、将来の自社の姿を描くバックキャスト的視点であることを意味します。見方を変えれば、CSV経営を推進するためには、こうした発想・アプローチが不可欠になるのかもしれません。

メンバーズのミッション・ビジョンに感じる「新しさ」

以上3回にわたって、株式会社メンバーズ様の“いきいき”を紹介してきました。固定観念に囚われず、常に一歩・二歩先を見据えている会社の姿勢に、クリエイター志向のZ世代の若者が惹かれ、そのなかで自分らしさを追求するという、組織(会社)と個人(社員)のエンゲージが“いきいき”を生んでいることを実感いただけたのではないでしょうか。

早川さん、佐藤さん、貴重なお話ありがとうございました。

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