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部門間連携

部門間連携×いきいき(1)~いきいきを阻む部門の壁

「組織のいきいき」を阻むものとして、セクショナリズムと呼ばれる「部門の壁」があります。3回シリーズで「部門間連携の推進」による組織の活性化について、述べたいと思います。

1-1 部門間連携が生まれづらい組織

組織コンサルティングを行っていると、「部門の枠を超えた取り組みがほとんどない」「製造部門と営業部門がすぐに対立する」「他部門が何をしているのか正直よくわからない」「自部門以外の人との交流がほとんどない」などの企業実態によく直面します。これらは総じて、部門間連携が生まれづらい組織と呼べるでしょう。こういった組織の背景には「セクショナリズム」があります。

1-2 セクショナリズムとは

セクショナリズムとは、自らが所属する部門の利害、権限、都合などを優先するあまり、他部門とのつながりが希薄になっている状態をさします。組織のサイロ化、タコツボ化と表現されることもあります。

具体的には、他部門に対する以下の4つのスタンスで説明できます。

「無関心」
他部門に関心がなく、メンバーの視界に他部門があまり入っておらず、他部門に対する理解も不足している状態です。
「非協力」
他部門との協力を負担に感じ、仮に協力が必要な場合でも最小限の関わりで済ませようとする状態です。
「批判」
他部門のせいで自部門の利益などが損なわれると考え、他部門に対する批判を繰り返すような状態です。
「排他」
他部門から自部門への干渉を排除しようとするなど、他部門に対して敵対的な態度をとる状態です。

1-3 中小企業なのに大企業病?

セクショナリズムは、典型的な大企業病の1つとして説明されることも多くあります。組織規模が大きい大企業ほど、組織の分権化が進み、組織の多部門化するため、セクショナリズムに陥りやすいといえるかもしれません。しかしながら、より規模の小さい中小企業であっても、セクショナリズムに陥っている事例は枚挙にいとまがありません。本来であれば、中小企業は規模の小ささを逆手にとり、部門の枠を超えた全社一丸体制を構築しやすいはずです。その中小企業がセクショナリズムに陥るのは、より深刻な状態であるといえるでしょう。

2.セクショナリズムが生まれるメカニズム~内集団と外集団

セクショナリズムが生まれることは、人間の心理特性・行動特性からみて仕方がないことかもしれません。アメリカの社会学者ウィリアム・グラハム・サムナーが提唱した「内集団(in-groups)」と「外集団(out-groups)」という概念を用いてセクショナリズムが生まれるメカニズムを説明します。

内集団(in-groups) 個人が自らをそれと同一視し、所属感を抱いている集団
外集団(out-groups) 「他者」と感じられる集団であり、競争心、対立感、敵意などの差し向けられる対象となる

人はすぐに集団を内集団と外集団に分けようとします。企業組織で考えれば、内集団=自部門、外集団=他部門のような意識を持つようになると、セクショナリズムが生まれやすくなります。そういった内集団が一度形成されてしまうと、内集団ではメンバー同士の親密さが強まります。一方で、メンバー同士の親密さが強まるほど、集団の閉鎖性が高まり、外集団に対して(悪意がなくても)線引きがなされやすくなります。あるいは、実際に線引きがなくても、外集団にいる人たちから見ると、内集団が閉鎖的である(=線引きされている)と映りやすくなります。

内集団をうまく活用すれば、自部門のチームワークを高めることができますが、同時に他部門(外集団)との間に壁を作ることになってしまいます。

さらに、人は内集団に対して、外集団よりも好意的な態度を示し、優れていると評価するという、身内びいきの傾向があります。これは行動経済学などで「内集団バイアス」と呼ばれます。内集団バイアスが働くことで、ますます部門間の壁が高くなってしまいます。

このような人の心理特性・行動特性を踏まえると、セクショナリズムは組織の避けがたい癖であるといえるかもしれません。

3.セクショナリズムの弊害

しかしながら、組織の避けがたい癖であるからといって、セクショナリズムを放置することは、企業にとって大きなマイナスです。ここではセクショナリズムがもたらす弊害を4つ示します。

3-1 部門間連携における生産性の低下

セクショナリズムの弊害の第1は、部門間連携における高コミュニケーション・コストにともなう生産性の低下です。

業務で部門間での協力・連携が求められる場合、セクショナリズムに陥っていると、部門間では「交渉型」のコミュニケーションをとります。「交渉型」コミュニケーションとは、お互いが必要最低限の情報しか共有せず、自部門がいかに有利になるかという観点から、他部門と交渉するものです。「交渉型」コミュニケーションの対となるものとして、お互いの情報共有度を高め、共通の目的意識からWin-Win となる関係構築を目指す「協調型」コミュニケーションがあります。

「交渉型」コミュニケーションと「協調型」コミュニケーションをビジュアル化すると、前者はバタフライの形状に見えることから「バタフライ型」、後者はダイヤモンドの形状に見えることから「ダイヤモンド型」と呼ばれます。

上記の図でもわかるように、部門間の情報共有度が低いバタフライ型は、コミュニケーション・コストが高くなり、企業全体として生産性が低下します。部門間での協力・連携で成果を上げるためには、お互いの情報共有度が高いダイヤモンド型のコミュニケーションが望まれます。

3-2 会社としての一体感の欠如

セクショナリズムの弊害の第2は、「他部門の社員も含めて同じ会社の仲間である」という会社全体としての一体感の欠如です。

本来、他部門の社員も同じ会社に所属する仲間です。他部門の仲間と交流し、つながりを持つことは、実際の業務での接点の有無に関わらず、会社全体としての一体感の醸成に寄与します。しかしながら、セクショナリズムに陥ると、「自部門社員=内集団」「他部門社員=外集団」の意識が高まるため、「他部門の社員も含めて同じ会社の仲間である」という一体感は生まれにくくなります。

他部門社員とつながりを持ち、他部門にも知り合いがいることで、各社員が「(他部門も含む)会社全体」という視座に立ちやすくなります。一方で、セクショナリズム下の社員は「自部門」の視座が支配的になり、「会社全体」の視座は持ちづらくなります。

「うちの会社は事業特性上、部門間の連携は必要ないので、他部門とのつながりが希薄でも問題ない」と考える経営者もいるかもしれません。しかしながら、他部門とのつながりが希薄な状態では、各社員が「会社全体」の視座は持ちづらく、会社全体としての一体感を醸成しづらいでしょう。

部門間連携の必要性の有無に関わらず、部門を超えて社員同士がつながりを持つことが、強い組織づくりに寄与します。

3-3 思考の硬直化と変化への抵抗

セクショナリズムの弊害の第3は、部門の同質的集団化にともなう思考の硬直化と変化への抵抗です。

内集団としての部門は、メンバー間で価値観や仕事のやり方等が共有されるようになります。これが徹底されると、部門は同じような価値観・やり方のメンバーが集まる同質性の高い集団となります。これは部門内での円滑な業務遂行という意味では、望ましい状態であると思われる方もいるかもしれません。

一方で、同質性の高い集団は、固定観念に囚われ、思考が硬直化しやすくなります。固定観念に囚われることで、より良い方法の探求を怠るおそれがあります。また、新しい方法の導入などを嫌い、変化に対して抵抗するかもしれません。

3-4 セレンディピティの未発生

セクショナリズムの弊害の第4は、部門の枠を超えた偶然の出会い(セレンディピティ)が生み出す「知のコラボレーション」の欠如です。

VUCA時代において、企業には変化を先取りし、それに適応するための斬新なアイデアを生み出す「創造性」が強く求められます。その実現のためには、部門の枠を超え、自社が有する資源・能力を総動員することが求められます。
※VUCA
「Volatility(不安定)」、「Uncertainty(不確実)」、「Complexity(複雑)」、「Ambiguity(曖昧)」の頭文字を並べたもの

このような状況下で、斬新なアイデアが生まれやすい仕掛けとして、部門の枠を超えた「偶然の出会い(セレンディピティ)の場」を意図的に設ける動きが広がっています。グーグル本社が部門の枠を超えた社員同士の交流・雑談を促進するために、大学のキャンパスのようなオフィス空間を設けているのは、その典型でしょう。他部門社員との立ち話程度の雑談(情報・意見交換)が契機となり、従来にない斬新なビジネス・アイデアを実現する「知のコラボレーション」が推進されます。
※セレンディピティ(Serendipity)
素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。ここでは斬新なアイデアが生まれる偶然の出会いの意。

セクショナリズムに陥っていると、こうした偶然の出会い(セレンディピティ)が生まれにくく、部門の枠を超えた「知のコラボレーション」は期待できません。

こうしたセクショナリズムの弊害を回避し、組織のいきいきを確保するために、部門間の交流・連携が重要となります。第2回以降は、部門間連携の具体的な取り組みを紹介します。

(著者:タンタビーバ パートナー 園田 東白)

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