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推し活

いきいき組織づくりのキーワード 「推し活(推し活支援で組織を活性化できるのか)」

いきいき組織づくりのキーワード 「推し活(推し活支援で組織を活性化できるのか)」

キーワードから「いきいき組織づくり」を考えるシリーズ。今回のキーワードは「推し活」です。

1.「推し活」と組織活性化

1-1. 「推し活」支援で組織は活性化するのか

「会社が社員の『推し活』を支援することで組織が活性化する」

このような主張に対して、いぶかしく思う経営者の方もいるかもしれません。
社員のプライベートな趣味の範疇の活動である「推し活」と、(プライベートではない)業務活動は一見すると無関係なようにも思えます。

経営者の中には、「推し活に熱中している社員は、仕事に集中できないのではないか」と懸念される方もいるかもしれません。しかし、その逆の効果があるというのが今回の主旨です。

「推し活」支援が社員のポテンシャルを引き出し、組織の活性化につながる理由と、「推し活」支援の具体的方策について整理していきます。

あなたは「推し活」支援をどう思う?

1-2. 「推し活」とは

改めて、「推し活」とは何かを定義しておきます。

さまざまな定義があると思いますが、ここでは「自分にとってのイチオシのアイドル、アーティスト、俳優、アニメのキャラクター、スポーツ選手などを様々な形で応援する活動」と定義しておきます。

応援の対象については、歴史上の人物や鉄道、施設・建築物、動物など多岐にわたります。また応援する活動としては、イベント参加、グッズ購入、聖地巡礼、ファン同士の交流、さらには推し対象とファンの交流などがあります。

推し活

1-3. 「推し活」の実態

推し活の実態について確認します。

日本の推し活人口については、各種調査結果にバラツキがあり、意見が分かれるかもしれません。たとえば、推し活総研が15~69歳の日本在住男女、2万人以上を対象とした「2025年 推し活実態アンケート調査」によれば、2025年1月の推し活人口は約1,384万人(推し活率16.7%)と推計されます。

同調査における15~34歳の男女別・世代別の推し活率を整理します。

女性 男性
15~19歳 56.0% 19.2%
20~24歳 36.8% 19.2%
25~29歳 31.3% 15.8%
30~34歳 30.4% 16.0%

(出所)推し活総研note
https://note.com/oshikatsusoken/n/n3c4895c4e4bc

この調査結果に基づけば、若年女性社員の3人に1人、若年男性社員の6人に1人は何らかの推し活を行っていることになります。さらに新卒社員予備軍とも呼べる15~19歳では、女性の2人に1人、男性の5人に1人が推し活を行っていると説明できます。

別の会社の調査では、さらに高い推し活率を示す調査結果もあります。どの調査をみても推し活人口は増加傾向であり、この傾向は今度も続くものと思われます。

2.推し活とワークライフ・エンリッチメント

2-1. 「ワークライフ・エンリッチメント」とは

近年、「ワークライフ・エンリッチメント」という考え方が注目されています。「ワークライフ・エンリッチメント」とは、仕事(ワーク)と私生活(ライフ)が互いにポジティブな影響を与え合うという考え方です。「ワークライフ・エンリッチメント」は「ワークライフ・バランス」と対比される概念です。

「ワークライフ・エンリッチメント」とは

2-2. 推し活とワークライフ・エンリッチメントの関係

推し活は、ワークライフ・エンリッチメントにおける「ライフ」の典型的な活動です。したがって、ワークライフ・エンリッチメントの考え方に基づけば、推し活の充実が仕事にポジティブな影響をもたらすと同時に、仕事の充実が推し活にポジティブな影響をもたらすという関係にあります。

推し活の充実が仕事にもたらすポジティブな影響とは、推し活で得られる充足感、幸福感が、ストレス解消や意欲・エネルギー源の確保につながり、「エネルギー充電したので、仕事も頑張ろう」と仕事のパフォーマンスにも好影響をもたらすというものです。

一方、仕事の充実が推し活にもたらすポジティブな影響とは、仕事で安定した収入を得たり、仕事に集中して効率アップする(=残業削減等につながる)ことで、推し活に必要な資金や時間を確保できるというものです。

ワークとライフ(推し活)の相互作用

2-3. 推し活が充実すると、仕事のパフォーマンスが向上する理由

推し活の充実が仕事のパフォーマンス向上につながる理由を掘り下げます。

推し活の充実が仕事のパフォーマンス向上につながる理由

(1)内発的動機づけの確保
「推し活のために仕事も頑張る」という個人的な意味づけは、「内発的動機づけ」につながります。内発的動機づけとは、個人の内的な欲求が自発的な行動を引き起こすモチベーションをさします。

「推しのために頑張りたい」というのは社員本人が自分で決めたことであり、外部の誰かから要求されたことではありません。自分で決めたことだからこそ、何としても成し遂げたいというモチベーションが高まります。

(2)良好なメンタルヘルスの確保
働く人は多かれ少なかれストレスに直面しながら日々の業務を遂行しています。いくら能力がある人でも、ストレス過多で良好なメンタルヘルスが確保されなければ、良いパフォーマンスは期待できません。

そうした中で、推し活は絶好のストレス発散となり、良好なメンタルヘルスを確保しやすくなります。良好なメンタルヘルスが高い集中力を生み、良いパフォーマンスが期待できます。また、ストレス負荷が少し大きい場合でも、推し活という心の支えがあることでストレスを乗り越えられることがあります。

(3)アイデンティティ(自己同一性)の強化
推し活は、「私は〇〇のファンだ」ということが本人のアイデンティティ(自己同一性)の一部となっています。人には自分のアイデンティティを守りたい、強化したいという欲求があり、そのために必要な行動にもモチベーションを感じやすくなります。そのことが「推しのイベントで最高の自分でいたい。自分を高めるために仕事も手を抜けない」のように、仕事のパフォーマンス向上をもたらします。

3.推し活支援の効果

2で述べたように、推し活の充実は仕事のパフォーマンス向上に寄与します。それ以外にも企業が社員の推し活を支援することで、以下のような効果を期待できます。

(1)従業員エンゲージメントの向上
企業が推し活を支援することで、社員は「この会社は自分の価値観を尊重してくれている」と感じ、さらには「好きなものを公言しても否定されない」「自分らしくいられる」という心理的安全性が醸成されます。その結果、「この会社の社員でよかった」「推し活のためにもこの会社で頑張りたい」という愛着が育まれます。

従業員エンゲージメントの向上

(2)採用力の強化
特に若年層の求職者は「自分らしく働けるか」「趣味や価値観を尊重してもらえるか」という観点を重視しています。そのため、採用ページで、推し活支援制度を利用しながらいきいきと働く社員のインタビューを掲載するなど、「推し活に理解がある会社」を訴求することは、採用力の強化につながります。

また、採用面接時にも「推し活」について質問を交えることで、応募者と密なコミュニケーションを図ることができ、心理的距離を縮めることが可能です。

採用力の強化

(3)“個の魅力”を組織に活かす
普段は口数が少なく人前で話すのが苦手な社員でも、自分の「推し」について語る場面では驚くほど饒舌になることがあります。これは、その人の“らしさ”や個性を知る絶好のチャンスでもあり、組織としても人材理解を深めるきっかけになります。スキルシートでは把握しきれない個人の魅力や強みに組織が目を向け、活かすことができれば、能力のさらなる発揮を期待できます。

“個の魅力”を組織に活かす

(4)セレンディピティの発生
企業が推し活を支援することで、社員同士がお互いの推し活を自己開示しやすくなるなります。その結果、共通の推しを持つ社員同士がつながり、世代や部署を越えたインフォーマルなコミュニケーションが活性化する可能性があります。さらに、 “セレンディピティ”(偶然の出会いから、新しい発想や協働が生まれる現象)が生まれる余地が広がります。

セレンディピティの発生

4.推し活支援の具体的な取り組み

推し活支援として、具体的にどのような取り組みがあるのかを紹介します。

「推し活休暇制度」
ライブやイベントに参加するための特別有給休暇を設ける制度。

「推し活休暇制度」

「推し活手当」
推し活に必要な費用の一部を補助する制度。

「推し活手当」

「推し活」を通した人材交流の活発化
「推し活」という共通項を見つけることで、新たな社員同士のつながり・交流を活発化させる。

「推し活」を通した人材交流の活発化

推し活」採用
「推し活しやすい会社」「推し活を応援する会社」を訴求する採用活動。

「推し活」採用

5.推し活支援の留意点

推し活支援は、社員の個性や情熱を活かし、組織の活性化に寄与する取り組みです。しかしながら、導入にあたっては“全員が推し活をしているわけではない”という現実にも、しっかりと目を向ける必要があります。

推し活に興味がない、あるいは一歩引いた視点で見ている社員も一定数存在するかもしれません。彼らにとって、推し活支援が“特定の趣味に偏った制度”と映ってしまうと、組織内の分断や不公平感を招きかねません。そうした懸念への対応や配慮について述べます。

推し活支援の留意点

(1)「推し活=趣味全般」への解釈の幅を持たせる
「推し活はアイドルやアニメだけのもの」という固定観念を取り払い、広義の趣味・熱中活動全般として捉えることで、関心のない社員も「自分には関係ない」と思わず、制度の意義を理解しやすくなります。たとえば、植物を育てる、地域の神社を巡る、特定の学問分野に夢中になることも「推し活」として解釈します。

(2)無理に共有を求めない“語らない自由”の尊重
推し活支援の中には、社員同士で語り合う場づくりがありますが、誰もが自分の趣味を開示したいわけではありません。プライベートな趣味を明かすことに抵抗を感じる社員もいます。語りたくない人が「話さなければいけない空気」に飲まれないよう、強制的な共有を避け、参加はあくまで任意であることを徹底しましょう。

(3)支援の恩恵を推し活以外にも広げる
たとえば「推し活休暇」を制度化する場合、それを「自己充実休暇」として位置づけ、旅行やリフレッシュ、資格取得など他の目的にも使えるようにするのも一つの工夫です。多様なライフスタイルに配慮することで、特定層だけが得をするという不満を避けられます。

(4)「何を推すか」に対する価値判断をしない文化
推し活支援を行う企業では、「あんなものが好きなんて…」という無意識の偏見が起きないよう、管理職を中心とした全社的な価値観の共有が必要です。特に、職場の心理的安全性を守るために、個々の好みや情熱を尊重する態度を推進することが重要です。

(5)実施後の社内ヒアリングと調整
制度導入後は、社員全体を対象にしたアンケートやヒアリングを実施し、温度差や懸念点を早期にキャッチアップする仕組みを整えましょう。定期的な見直しと改善を通じて、“誰もが居心地のよい制度”として成熟させていく姿勢が、制度定着のカギとなります。

人手不足が深刻な時代、特に若年層の採用・定着に向けては、「推し活」支援はユニークかつ効果的な取り組みになるのではないかと思います。あなたの会社でも検討してみませんか。

(著者:タンタビーバ パートナー 園田 東白)

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