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理念経営

「ホワイト企業大賞」表彰企業のいきいき組織づくり 【1】~「日本と世界の架け橋となる」ための自発的行動でいきいき (前半)

【カンパニープロフィール】
1970年に「道頓堀ホテル」を開業して以来、ホテル業を展開してきた株式会社王宮(本社:大阪府大阪市中央区)。現在ではブリッジホテルグループとして「道頓堀ホテル」をはじめ、「ザ ブリッジホテル心斎橋」「大阪逸の彩ホテル」「沖縄逸の彩ホテル」「天一ホール」を運営しています。約55億1千万円(2024年4月期)、従業員数約220名。

《経営理念》
誠実な商売を通して、心に残る想い出づくり
《ビジョン》
共に幸せと誇りを感じる会社
《私達の使命》
私達は日本と世界の架け橋になります

1.自社の使命に対する社員の共感が最大の強み

2008年に海外の個人客をメイン・ターゲットとしたインバウンド戦略に方向転換し、インバウンド対応のビジネスホテルとして存在感を示してきた株式会社王宮様。同時に2010年に経営理念を確立し、理念経営を強力に推進してきました。「日本と世界の架け橋となる」という使命に対する社員の共感が王宮様の最大の強みであり、その体現が「共に幸せと誇りを感じる会社」というビジョンの実現につながっています。

2023年度にはホワイト企業大賞として表彰されました。2023年度(第10回表彰)の応募企業の中で大賞として表彰されたのは王宮様のみです。
※「ホワイト企業大賞」
ホワイト企業大賞企画委員会主催。「ホワイト企業=社員の幸せと働きがい、社会への貢献を大切にしている企業」と定義し、応募企業に対して、アンケート調査、ヒアリングなどを行い、企画委員会での検討を経て選考される。第1回表彰(2014年度)以来、年1回表彰を行っている。

ホワイト企業大賞サイトから王宮様の表彰についてのコメントを引用させていただきます。

社員に理念が浸透していることで、使命感をもって自ら進んで仕事をされています。それが顧客に伝わり、ファンが生まれ、高いやりがいと高い稼働率につながっている企業です。背景には、経営者が社員を尊重し、それぞれの意見を聞こうとする姿勢があります。例えば、月に1度「理念勉強会」という学びの場があり、すべてのレポートに経営者がコメントを入れて返却する仕組みになっています。こうした双方向のコミュニケーションと成長の機会が用意されることで、お互いが切磋琢磨し合う喜びがあると聞きます。福利厚生の充実も含め、社員は大切にされているという感覚を持ち、安心して働けると言われます。 また、ほかにもさまざまな取り組みがあるのですが、経営者が何年にもわたってそうした良い社風をつくろうとしてきたことで、全員が一つの想いで働くことにつながり、部門の壁、上下の壁もなく、働きやすさが生まれています。ヒアリングでは、常に話の土台に使命があり、好きな会社で働けること、自分の言葉で自分の意見をしっかり伝えることができる姿は幸せそうでした。顧客のために耐え忍ぶことが美徳とされる向きもまだ残っているホテル業界にあって、高い働きがいと幸せを本当に大切にしている企業です。

このように社員の幸せと働きがいを大切にする会社として外部からも高く評価されている王宮様。今回、専務取締役の橋本 橋本 明元さん、入社6年目のアシスタントマネージャー 岡 愛子さん、入社3年目のフロントスタッフ 崎島 夏未さんの3名にインタビューし、3回に分けて「ホワイト企業大賞」表彰企業の“いきいき”を掘り下げたいと思います。

第1回は、「日本と世界の架け橋となる」という使命感に基づくスタッフのいきいき行動と、いきいきが生まれる経営者の仕組みづくりを紹介します。

〈インタビューへのご協力〉

〈インタビューへのご協力〉

株式会社 王宮 ブリッジホテルグループ 専務取締役 橋本 明元さん(画像中央)
株式会社 王宮 ブリッジホテルグループ アシスタントマネージャー 岡 愛子さん(画像右)
株式会社 王宮 ブリッジホテルグループ フロントスタッフ 崎島 夏未さん(画像左)

2.「共に」幸せと誇りを感じる会社、それぞれが自分らしく輝ける会社

王宮で働く魅力を岡さん、崎島さんに社員目線で語ってもらいました。

「頭の中ですぐに浮かんだ言葉が、当社のビジョンである『共に幸せと誇りを感じる会社』ですね。特に私が好きなのは『共に』というワードです。自分一人ではなく、周りのみんなと一緒に仕事をしているという意識が強いです。互いにサポートし合い、何かあればみんなでアイデアを出し合いながら、共に成長し、一緒に誇りを持って働くことできています」(岡さん)

「魅力として強く感じるのでは、それぞれが自分らしく輝ける場所があるという点です。先輩方が悪いところを注意するというよりも、それぞれの良さをどんどん伸ばすような指導をしてくださるので、その部分を活かして挑戦しやすい風土があります」(崎島さん)

二人の言葉からは、チームとしての一体感と多様な個の尊重・能力発揮を同時実現している姿がイメージされます。

3.働く喜びにつながる自発的行動

王宮社員がいきいきと働くことできる背景には、先ほども述べたように、「日本と世界の架け橋になる」という使命への共感と、それを踏まえた社員の自発的行動があります。この自発的行動が働く喜びにつながっている面が大きいようです。岡さん、崎島さんに具体的なエピソードを披露していただきました。

(1)お客様の忘れ物をタクシーで空港まで届ける
まず岡さんのエピソードです。

「既にチェックアウトして関西空港にいたお客様から『大事な物を客室に忘れた』という電話がかかってきました。その忘れ物が見つかったので、お客様に連絡を取ったところ、飛行機の時間が迫っておりホテルへ取りに行く余裕がないとのことでした。そこで私が忘れ物を届けに行くことを決断し、タクシーで空港に向かいました」
(岡さん)

日頃から岡さんの頭の中には「迷ったときには会社の使命を思い出し、それに合致する行動であれば大丈夫」という判断基準があり、今回の行動もそれに沿ったものでした。

「私自身は宿泊中に接した時間は短く、正直あまり知らないお客様でしたが、空港で忘れ物を渡した瞬間、お客様(女性)が感動して涙しながらハグしてくださり、『また日本に遊びに来ます!またあなたたちのホテルに泊まります』とおっしゃってくださりました。そのとき、『お客様の役に立てて良かった。これでお客様の日本に対する印象がさらにアップしたかもしれない。自分は本当に良いことをした』と感じました」(岡さん)

なお、王宮では権限委譲で20万円まで上司の決済不要で、各社員の裁量で使うことができるようになっています。上記の岡さんのエピソードの背景には、このような社員が自発的行動を起こしやすい制度づくりも影響しています。

(2)着物の着付けイベントの写真でメッセージカードを作成
続いて崎島さんのエピソードです。

王宮の各ホテルでは夕方1時間毎日違った日本文化体験イベントを開催しています。その中でトップを争う人気イベントとして着物の着付けがあります。これはスタッフがお客様に着物を着付けて、自由に写真を撮るなどして楽しんでもらうイベントです。スタッフがお客様から許可を取り、イベントの写真をSNSにアップすることもあります。

「ある日、私が着付けイベントの担当となり、仲良くなったドイツから訪日のお客様の写真を撮りました。そのとき写真を撮る許可はもらったのですが、あとでSNSにアップする許可まで聞くのを忘れていたことに気づきました。コロナ禍になる以前から日本に来ることを楽しみにしていたお客様で、とても素敵な写真だったので勿体ないと思いました。そこで退勤まで30分あったので、デザインアプリでその写真を編集して勝手にメッセージカードを作成し、お手紙も添えてそのお客様の部屋に届け、(お客様とは直接会うことなく)その日は退勤しました」(崎島さん)

この崎島さんの自発的行動が感動ストーリーを生むことになります。
「次の日出勤すると、夜勤スタッフから『お客様から崎島さんへ渡してほしいと頼まれたのでどうぞ』と、メッセージと共に日本の土産物を渡されました。感謝の気持ちを何とか伝えようと、これまで買ったお土産の1つを私に贈ってくださったのだと思います。私もとても嬉しくなり、チェックアウト時も含めてお客様に何度も『ありがとう』と感謝を伝えました」(崎島さん)

感動ストーリーにはさらに続きがあります。
「それから数週間してドイツに帰国したそのお客様から私宛の手紙が届きました。手紙には『日本がこんなに楽しいところだと思わなかった。初めての日本旅行を楽しいイベントにしてくれてありがとう』と書いてありました。この手紙を読んで、私も良い仕事ができているのかもしれないという働きがいや、このホテルで働く楽しさを感じることができました」(崎島さん)

ここで紹介した岡さん、崎島さんのエピソードは、「サティスファクション・ミラー」と呼ばれる現象を想起させます。「サティスファクション・ミラー」とは、顧客満足度と(顧客との接する)従業員の満足度の「合わせ鏡」のような関係性をさします。すなわち、顧客との接点において、従業員が良いサービスを提供した結果、顧客の満足度が高まると、従業員自身の満足度も高まり、さらに良いサービスを提供しようとするといった、顧客満足度と従業員満足の相互に影響し合う関係性のことです。

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