2.改革を成し遂げるまで
(1)改革へのネガティブな反応
ハミダスの中核活動である「あぐら」を開始した当初は、社内でもネガティブな反応が多かったようです。
「最初は幹部もネガティブな反応でした。『あぐら』に対して、社長の思いつきで出歩いているくらいにしか思われていませんでした。全国飛び回ると、長い時間いなくなるじゃないですか。業績は厳しく、課題が山積している中で、『社長にはここ(本社)にいてもらわないと困る。社長不在では相談もできない。あぐらをやめてほしい』という訳です。私には直接言いませんでしたが」(池田さん)
当時、みんな池田さんに直接言えず、事務局の吉野さんを呼び出して抗議してきたそうです。
「私が会議室に呼び出されて、『あぐらをやめさてほしい』と何度も言われました。当時私は『いや池田さんはああ見えて頑固なので、やるって言ったらやりますよ。でも私には止められません。そんなにやめさせたいならば自分で直接池田さんに言ってください』と言い返していました」(吉野さん)
ハミダスフレンズの活動に対しても、多くの上司は否定的に受け止めていたようです。
「ハミダスフレンズの上司も、最初の頃は否定的に見ていたと思います。自分の部署で誰かを指名する。申請されているから認めるけれど、仕事が忙しいにもかかわらず、そのような活動をして意味があるのか、という上司はほとんどだったかもしれません。そこでトップが腰砕けになっていたら続かなかったと思います」(池田さん)
(2)あきらめるまでやり続ける
しかし、そういった「あぐら」への抗議は1年目で収まったそうです。
「いろいろ言われたのは1年目だけでした。いくら言われてもやり続けることで、周囲もあきらめたのだと思います(笑)。でも『あきらめるまでやり続ける』ということがハミダスを成功に導いたと思います。周囲からいろいろ言われて、やめる理由なんかいくらでもあるんです。それでも開き直ってやり続けるというのは、よほどの信念がなければできないことだと思います」(吉野さん)
「やり続ければ何らかの成果が出るんです。その前に耐えられず、止めてしまうから改革に失敗するのだと思います。『あぐら』で顕著にみんなが喋るようになってきたとき、何かが変わってきているんだなと感じたし、これは続けば社内の雰囲気が良くなると思いましたし、動画メッセージも社長以外の人がどんどん出てくれるようになって、これも必要なんだなと実感しました」(吉野さん)
(3)ハミダスはゆっくりジワジワ
ハミダスの風土改革は、多くの人がイメージするような、何かがあるときから劇的に変化するドラスティックなものではないと、吉野さんは強調します。
「ハミダスって、ゆっくりジワジワなんです。そんなにドラスティックにパンって変わるものではありません。『あぐら』も『動画メッセージ』もハミダスフレンズも、一気にではなく、ゆっくりジワジワ変わっていきました。これはとても重要なポイントです」(吉野)
吉野さんはゆっくりジワジワの改革を「ゆでガエル方式」と呼んでいます。
「私は『ゆでガエル方式』と呼んでいますが、茹でられる側が意外とわからないんですよ。みんな変わってきているのに、本人たちはあまり自覚がないんです。でもそこが大事です。改革をドラスティックにやると、一見変わった感じになりますが、反発も多く、続かなくなります。ゆっくりジワジワ変えていくことができたというのが、結果的に正解だった気がします」(吉野さん)