幸いなことに池田さんの見立て違いで、社長の任期中に業績が向上しました。
「そこはもう私の見立て違いで、4年程度で業績が急に上がったんです。しっかり基礎固めで畑を耕したからこそ、急に業績向上したのだろうと思います。でも結果論ですね。当時は確たる目算があってやっているわけではなくて、そういうふうに繋がればいいかなと思いつつでも、自分の任期中は難しいと思っていましたから」(池田さん)
(2)NPO(ノン・プロフィット・オーガニゼーション)と揶揄されたことも
池田さんご本人は業績が上がるまで時間がかかると、覚悟を決めたものの、周囲からは早急な業績回復を求められたそうです。
「私の6年間のうちの最低業績が営業利益率1.9%だったのですが、、そのときはやはり言われましたね。グループで上場していますから、社外取締役、IRなどいろいろなところで業績を追及されます。あるときは、『この会社はNPO、ノン・プロフィット・オーガニゼーションだ』と揶揄されました。あれは絶対忘れないですね(笑)」(池田さん)
しかしながら、先に述べたように、その後は業績が向上します。
「私の前の時代からメーカーだから営業利益率5%を目指していましたが、一度も実現していませんでした。私の就任初年度は3%でした。そして、先に述べた3年目の1.9%が底だったのですが、5年目は4%、最終の6年目は6.8%まで向上しました。」(池田さん)
一方で、吉野さんは当時池田さんと話していて、業績についての話は一切出なかったそうです。
「営業利益が下がっている、NPOと揶揄された、最低の営業成績だといった話について、当時、池田さんは私には一言も言わなかったです。先ほどの畑を耕すだけといった話も、会長になった後の社内講演会で初めて知りました。当時そういった状況をインプットされていたら、ハミダス活動なんて続けられなかったと思います」(吉野さん)
(3)「やり抜く力(GRIT)」の重要性
第2回でも述べましたが、池田さんが自分で決めたことをやり続けた、経営者としての覚悟がハミダスの成功および業績向上という成果をもたらしたと思います。
この池田さんの覚悟・姿勢・行動を見ていて、ベストセラーとなったビジネス書籍『やり抜く力 GRIT(グリット)』(アンジェラ・ダックワース著、ダイヤモンド社、2016年)を思い出しました。
同書で、心理学者でペンシルバニア大学教授の著者アンジェラ・ダックワース氏は、社会的に成功を収める最も重要な要素として、個人のやり抜く力である「GRIT (グリット)」を提唱しました。
GRIT (グリット)とは、以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。