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次世代リーダー育成

いきいき組織紹介~太平洋精工株式会社 様
「新しい流れプロジェクト」~次世代リーダーの実践的育成~【1】

「新しい流れプロジェクト」と次世代リーダーの育成

【カンパニープロフィール】
1961年設立。岐阜県大垣市に本社を置き、自動車用ヒューズのリーディング・カンパニーとして国内・海外でトップクラスのシェアを誇る太平洋精工株式会社様(略称:PEC)。海外にも生産・販売拠点を持つグローバル企業であり、自動車用ヒューズ以外に精密金属プレス加工・金型製作も行っています。2025年3月期の売上高(単体)265億円、2025年3月31日時点での国内従業員数446人(グループ全体1049人)。

<ビジョン:PECが未来に向けて持ちつづける志>
独創性を追究し、安全・快適なクルマ社会の「新しい流れ」を創りつづけます

1.「新しい流れプロジェクト」と次世代リーダーの育成

太平洋精工株式会社(以下PECと略す)様では、2022年、若手社員が主体性を発揮して、新しいことにチャレンジする「新しい流れプロジェクト」を発足させました。

「新しい流れプロジェクト」は、PECの将来を担う次世代リーダー育成のプロジェクトと位置づけることができます。次世代を担う社員たちが部門横断的に選抜され、そのメンバーが会社を変える「新しい流れを創る」ために、約1年かけて自らテーマを設定し、そのテーマ実現に取り組みます。

プロジェクトは1期(2022年)、2期(2023年)、3期(2024年)と継続し、4期(2025年)の活動も動いています。

今回、プロジェクトの参加メンバーである伊藤 里恵さん(1期生)、髙島 亜希子さん(2期生)、橋本 健治さん(3期生)、柳瀬 光秀さん(3期生)、堀 紘通さん(3期生)の5名にインタビューさせていただきました。2回に分けて、次世代リーダーの実践的育成について掘り下げたいと思います。

(インタビューへのご協力)

インタビューへのご協力

営業本部 購買グループ 購買チームチーム長 伊藤 里恵さん(1期生、画像一番左)
営業本部 営業グループ LV営業チーム 髙島 亜希子さん(2期生、画像左から二人目)
HV事業本部 技術グループ 工程チーム 橋本 健治さん3期生、画像中央)
HV事業本部 製造グループ 製造チーム 柳瀬 光秀さん(3期生、画像右から二人目)
営業本部 営業グループ HV営業チーム 堀 紘通さん(3期生、画像一番右)
※所属部署・役職はインタビュー当時のものです。

なお、本プロジェクトにおいて、タンタビーバは1期から企画・運営を支援しています。タンタビーバの支援事例の観点から、「新しい流れプロジェクト」を紹介する記事もありますので、ご参照ください。

太平洋精工株式会社様 「新しい流れプロジェクト」支援
~会社を変える次世代リーダーの育成~

2.「新しい流れプロジェクト」の全体像

「新しい流れプロジェクト」の全体像を簡単に整理しておきます。

「新しい流れプロジェクト」全体像

※上記の図は3期の実施状況をベースとしたもので、各期で仕組みは異なる部分があります。

参加メンバーはチーム単位の活動が基本となります。チーム活動は毎期9月頃のキックオフミーティングと共に始まります。チーム活動は、大きく前半(9月~翌年3月)と後半(4月~10月)に分かれます。

(1)チーム活動の前半:テーマの企画・計画

プロジェクトの前半は、テーマの企画・計画です。「新しい流れ」として会社をより良くするテーマを検討し、その妥当性を検証しながら、最終的なテーマを設定します。さらには実行に向けた計画を立案します。

前期はチーム活動のガイドや基礎体力づくりのために、全6回のセッション、研修・アセスメントも組み込まれています。さらに各メンバーに対するパーソナルコーチングも実施しています。

現在の陣屋グループのビジネス領域

(2)チーム活動の後半:テーマの実行

プロジェクトの後半は、前半に立案したアクションプランの実行が基本となります。約半年の実行期間を経て、毎年10月に活動の成果報告会を開催し、プロジェクトは解散となります。

(3)プロジェクトの支援体制等

本プロジェクトは社長が強くコミットメントした全社的プロジェクトであり、役員、グループ長、チーム長はプロジェクトを積極的に支援するという位置づけになります。さらに、役員・グループ長のなかから、プロジェクトの相談役としてダイレクターを選任し、サポート体制を強化しています。それ以外に、役員、グループ長、チーム長、さらには過去のプロジェクトメンバーとの交流機会も設けています。また、本プロジェクトでの活動は、メンバーの人事評価に組み込まれます。

プロジェクト全体像の詳細を知りたい方は、こちらの別記事をご参照ください。

太平洋精工株式会社様 「新しい流れプロジェクト」支援
~会社を変える次世代リーダーの育成~

3.成長への期待を表明する(ピグマリオン効果)

ここからは、メンバーへのインタビューを交えながら、次世代リーダー育成のポイントを整理します。

まずプロジェクトへの参加打診の局面に着目したいと思います。メンバーの選任については、各グループ長がメンバーの選定・打診を行い、最終的に社長が任命を行います。プロジェクトをメンバーの成長機会とするためには、前向きにプロジェクトに参加してもらうことが不可欠です。

そこで重要となるのがプロジェクトへの打診の仕方です。

「グループ長から打診されたとき、自分が何番目に声をかけられたのかを尋ねたら、最初であることを聞かされ、『やります』と返事しました。誰がメンバーかわからず不安もありましたが、最初に声をかけていただけるという期待が嬉しかったですね」(橋本さん・3期生)

橋本さん・3期生

「グループ長、チーム長から打診されて、率直に嬉しかったですね。部署自体が若いメンバーが多く、『若いメンバーを引っ張っていってほしい』という期待も伝えてもらい、その期待に応えたいという気持ちになりました」(柳瀬さん・3期生)

柳瀬さん・3期生

橋本さん、柳瀬さんの場合、打診の際に上長が期待を表明したことで、ピグマリオン効果が働いていると説明できます。「ピグマリオン効果」とは、教育心理学者ロバート・ローゼンタールが明らかにした「教師が伸びると信じて生徒に接していると、生徒も教師の期待に応えようと行動し、成績が伸びる」という現象です。本プロジェクトに当てはめれば、以下の図のように示すことができます。

ピグマリオン効果

4.会社を変える取り組み

続いて、4、5ではプロジェクトでメンバーが何を経験するのかに着目します。

今回のプロジェクトで、メンバーは「会社を変える取り組み」を企画・計画し、その実行まで行います。メンバーにとって、これまで経験したことのない新しい経験です。

「会社を変える取り組み」という新しい経験

(1)広い視野、高い視座で物事を見る

この場合の「広い視野」とは、自部門だけではなく、関連する他の部門や全社的な物の見方を行うことを意味します。また、「高い視座」とは、現在の自分のポジションではなく、より上位階層の立場(位置)から物事を見ることを意味し、同時に目の前のことだけでなく、近い将来から遠い将来まで長い時間軸で見渡せることも意味します。

広い視野、高い視座で物事を見る

「新しい流れプロジェクトに参加する前の自分は、『これやったら、次にこれやって』のように、目の前のタスクに追われていた気がします。プロジェクトに参加することで、その活動時間内は日常業務を一旦忘れて、今まで考えてこなかった自分の未来や会社のあるべき姿を考えることができ、自分を見つめ直す良い機会となりました。やはりリーダーとして上のポジションに立っていくためには、自分のことだけを見ていてはだめで、会社のあるべき姿や未来のことを考えて動くことが必要だと気づくことができました」(伊藤さん・1期生)

伊藤さん・1期生

伊藤さんの発言から、「会社をより良くする」ことを考えるためには、より高い視座から会社全体を俯瞰して見たり、現在だけではなく未来まで視野に入れる必要があることを確認できます。

本プロジェクトは高い視座、広い視野から会社について考える良い機会となっています。

(2)「正解がわからない問題」を解決する

本プロジェクトで取り上げる「会社を良くする」という問題は、それまでメンバーが通常業務で扱ってきた問題とはタイプが異なるものであったかもしれません。

「そもそも立案したアイデア自体が妥当なものなのかとても悩みました。ビジネスであれば収益性の観点から、儲かるのか否かという判断基準がはっきりしてるので、わかりやすく判断できます。しかしながら、会社を良くするための取り組みになると、数字で表せれない、何か基準を設けて選ばなければいけなかったので、そういう議論はみんなが不慣れだったと思います。それが正解のないものなので、とても大変でした」(髙島さん・2期生)

髙島さん・2期生

髙島さんが指摘しているように、「会社を良くする」というのは「正解がわからない問題」です。「正解がわからない問題」は、マネジメント分野では「適応課題」という概念として説明されます。

「適応課題」とは、ハーバード大学ケネディスクールの名物教授として知られるロナルド・ハイフェッツが、「技術的問題」との対比で論じた概念です。

「技術的問題」と「適応課題」

参加メンバーの多くは、それまで技術的問題(正解がわかっている問題)を扱うことが多かったのではないかと推察されます。そのため、正解がわからない「適応課題」の解決に不慣れで、戸惑っていたのではないでしょうか。

しかしながら、今後リーダーとして上のポジジョンに立つと、正解がわからない「適応課題」に直面することが多くなります。正解がわからない「適応課題」を解決するためには、試行錯誤しながら自分たちで正解を導き出す必要があります。

本プロジェクトは、セッションのファシリテーター、ダイレクター、事務局の三者が、メンバーに答えを教えるのではなく、自分たちで答えを導き出せるようにサポートするコーチング的支援を徹底しています。これもメンバーたちに「適応課題」を解決する力、すなわち自分たちで正解を導き出す力を習得してもらうためです。

コーチング的支援で自分たちで正解を導き出す力を習得

(3)会社全体を巻き込む

本プロジェクトでは、会社をより良くするアイデアを出すのみならず、その実現に向けたアクションを実際に起こすことが求められます。すなわち、アイデア実現に向けて、上位者を説得し、会社全体を巻き込む必要があります。

そもそも「新しい流れプロジェクト」は、会社の将来を担う若手メンバーに、自分たちで企画・計画して実行までやりきる経験を積ませることを意図して発足させたものです。「企画・計画」のみで終わるのではなく、会社全体を巻き込む「実行」までやりきることを会社としても重視しています。

「新しい流れプロジェクト」は会社全体を巻き込む「実行」までやるきる

今回、メンバーとは別に、ダイレクターにも話を伺いましたが、若手メンバーが会社全体を巻き込むことは、ハードルが高く、一番悩むところかもしれないと話していました。実際、メンバーがダイレクターに相談する内容も、上層部を説得するためのストーリーや従業員へ発信方法などに関するものが多いと教えていただきました。

会社全体を巻き込む「実行」までやりきることで、メンバーは「自分たちも会社を変えていくことができる」と実感でき、会社を変革するために必要なプロセスや実践手法を体感することができます。

また、会社全体を巻き込むためには、上層部を説得する必要があります。そのためには、上層部と交流機会を持ち、考え方や価値観などを知ることが役立ちます。本プロジェクトでも役員・グループ長・チーム長との交流の場として懇親会・相談会を開催しています。

「それまで上位役職者の方々と話す機会があまりなかったので、プロジェクトの中で役員・グループ長・チーム長やダイレクターなどと意見交換や交流できたことは貴重な体験でした」(髙島さん)

5.チームビルディング

本プロジェクトは、部門横断的にメンバーが選抜され、チーム単位で活動していきます。その意味で、本プロジェクトで活動していれば、自ずとチームビルディングを実践的に学ぶことができます。

(1)チームが機能するプロセス

「本当にチーム一丸になった瞬間があって、それが印象に残っています。それまではあまり意見を言わない、議論が膨らまない状態であり、私がメンバーで一番年上だったので、私の意見で議論が進んでいました。あるとき、私の意見に反対するメンバーが出てきて、それをやるかやらないかでチームが真っ二つに分かれました。そのときにみんなの本音が出てきて、とても建設的な議論ができました。チームが崩壊する危機だったかもしれませんが、それを乗り越えて良いチームになれた瞬間だったと思います。それ以降、議論が活発化し、進捗もスピードアップしました」(堀さん・3期生)

堀さん・3期生

堀さんの話にもあるように、どのようなチームでも機能するためには一定の時間とプロセスを要します。チームが機能するプロセスを示した有名なモデルに「タックマンモデル」があります。

タックマンモデル(チームが機能するプロセス)

「今までは、チームの関係を壊さずに60点のものを達成できればいいと考えていましたが、プロジェクトに参加して、たとえ対立が発生してでも、綺麗にまとまらずに80点のものを目指したほうが楽しいと考えるようになりました。アウトプットの質も高まるし、自分の達成感や充実感も変わってくると思います」(堀さん)

堀さんの発言のように、対立をおそれず、本音で話し合うことでチームの成果が高まり、メンバー個人の満足度も高まります。これはタックマンモデルの視点とも合致するものです。

(2)お互いが本音で話し合うためには~心理的安全性の確保

「プロジェクトの最初の頃は、本音の部分をしゃべりづらいこともありましたが、話し合いでも沈黙が続いて、活動を進めていくこと自体が難しいのではないかと思っていました」(橋本さん)

「最初、他者のアイデアに対してみんなが言いたいことを言えず、どんなアイデアにも『いいよね』と返しているような雰囲気でした。そんな中で、誰かが『ちょっと本音で話そうよ』と切り出してくれて、それをきっかけにお互いの思いを正直に話せるようになりました」(髙島さん)

橋本さん、髙島さんの話のように、チームを発足させて、いきなり本音ベースで話し合うのは難しいものです。各メンバーがいきなり本音を言いだしづらいのは、チームに「心理的安全性」が確保されていないためです。「心理的安全性」は、今や職場づくりやチームビルディングの必須ワードとなっているので、ご存知の方も多いと思います。

お互いが本音で話し合うためには~心理的安全性の確保

タックマンモデルと関連づけて説明すると、チームで集まったばかりの形成期は、メンバー同士が互いをよく知らず、自分をさらけ出すことにリスクを感じているため、心理的安全性が低い状態といえます。それがチーム活動を重ねて、混乱期、統1期を経ていくと、お互いの相互理解が深まり、自分をさらけ出すことへの抵抗が少なくなるので、心理的安全性が高まっていきます。

チームの形成期は「心理的安全性」が低い状態

「チームの中には、意見を述べるのが苦手なメンバーもいたので、そういう人から意見を引き出すためにはどうしたらいいのかといった点は、心理的安全性も含めて、とても勉強になりました。」(髙島さん)

チーム内における心理的安全性の確保は、今日のリーダーにとって必須の役割です。髙島さんのように、プロジェクトでのチーム活動経験から、心理的安全性を確保し、メンバーから本音を引き出す実践方法が学べるはずです。

お互いが本音で話し合うためには~心理的安全性の確保

(3)意見対立を乗り越えて合意を形成するためには

(1)でも述べたように、チームの成長のためには意見対立も必要です。しかし、最終的にはそれを乗り越えて何らかの合意を形成しなければなりません。

「誰かが『ちょっと本音で話そうよ』と切り出してくれて、それをきっかけにお互いの思いを正直に話せるようになりました。本音で『結局こういうことがしたいんだよね』のように話していると、みんなに共通している部分が見えてきました。そこからアイデアを絞り込むというよりも、さらに新しいものが生まれて最終的なアイデアがまとまりました」(髙島さん・2期生)

上記の髙島さんたちのチーム(2期生)の場合、最終的な合意形成(アイデア決定)に至る前に、「アコモデーション」による合意形成が行われていました。

アコモデーションは、コンセンサスと対比される概念です。コンセンサスは、意見の完全一致による合意形成をさします。一方、アコモデーションとは、意見・アイデアは異なっても、その根底部分の共通認識を持つことで、異なる意見・アイデアを同居させたまま合意するものです。例えば、「方法論は異なるが、会社の○○を見直すべきという思いは共通している」といった合意です。アコモデーションにより、意見・アイデアは異なっても、互いにそれを認め合うことができます。

意見対立を乗り越えて合意を形成するためには

チーム内で意見対立がある場合、コンセンサスによる合意形成を目指しても、多くの時間を費やしたにもかかわらず合意に至らないことがあります。そういった場合、アコモデーションによる合意というワンクッションを挟むことで、解決の糸口が見えてくることがあります。

髙島さんのチームの例も、アコモデーションというワンクッションを挟んで仕切り直すことにより、アイデアの絞り込みではなく、互いの意見を発展させた、新たなアイデアの生成を実現できたのではないでしょうか。

(4)チーム内の多様性を活かす

最後に、本プロジェクトのチームは部門横断的なメンバー構成であるという点に着目したいと思います。

このようなチームは、同じ部門内のメンバーのみで構成されるチームと比較して、チーム内に多様な価値観・意見が存在しやすくなります。

同じような価値観・意見のメンバーのみで議論するよりも、多様な価値観・意見のメンバーで議論する方が選択の幅が拡がり、固定観念に囚われることなく、斬新なアイデアが生まれやすくなります。

チーム内の多様性を活かす

「私の場合、(PECに転職するまで)製造業で働いたことがなかったので、製造現場の人や技術者との関わりがありませんでした。その意味で、このプロジェクトのように自分と全く違うバックグラウンドのメンバーと、同じチームで、同じ目標に向かって1つのことをやり遂げる経験は貴重なものだと思っています」(堀さん)

堀さんの発言のように、異なるバックグラウンドのメンバーが集まるチームの特性を活かして、互いを尊重しつつ、多様な価値観・意見によるケミストリーを起こすことが、斬新なアイデアの生成につながります。

以上、第1回では「新しい流れプロジェクト」における次世代リーダー育成のポイントを、プロジェクトへの参加打診の仕方、会社を変える取り組み、チームビルディングという観点から掘り下げてみました。第2回では、参加メンバーのヨコのつながりの強化、プロジェクトを通した自身の見つめ直し、参加メンバーが目指す人材像などを紹介します。

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