4.VISION2030策定のヒントとなったベンチマーク・視察
VISION2030策定のプロセスについての話を伺っていて興味深かったのが、メンバーズの経営陣が会議室での議論のみでビジョンを策定したのではなく、ヒントを求めて北欧のベンチマーク・視察を行っていた点です。
(1)北欧のベンチマーク・視察
前述のように、メンバーズでは欧米と比較して、日本企業のCSV経営が遅れている点に問題意識を持っています。それに関連して、CSV経営の先進国としての北欧(フィンランド、スウェーデン、デンマークなど)に注目し、ベンチマークや視察を行いました。
国際的な研究組織「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)が世界各国のSDGsの達成度を評価する『Sustainable Development Report』の2025年版においても、フィンランド、スウェーデン、デンマークがトップ3を占めています。
北欧のどのような点に注目したのかを説明してもらいました。
「北欧の人たちのなかでは、仕事をするうえでどのように社会貢献するのか、ということが必ず紐づいていて、その観点からキャリアデザインやスキルアップも検討されます。そういう実態や、その背景にあるものに経営陣が興味を持ち、社長や役員が視察しました。たとえば、どのような学校教育をしているのか、企業のなかでどのような働き方をしているのか、キャリアデザインのなかでどのようなリスキリングをしているのか、といったことを現地で実際に目にしてきました」(早川さん)
「北欧と日本で明らかに違うのは、ジョブディスクリプション(職務記述書)でその仕事に必要なスキルや経歴が明確化されている点です」(早川さん)
北欧ではジョブ型雇用が標準であり、ジョブディスクリプション(職務記述書)に合致するスキル・経験がなければ書類選考を突破できません。したがって、希望する職務に就くためには、ジョブディスクリプション(職務記述書)を満たすためにスキルアップやリスキリングが必要になります。
「そこで、仕事と社会貢献の紐づけをどうやっているのか、スキルアップやリスキリングのために学び続ける意欲をどうやって維持させているのかを知ることができれば、メンバーズの考え方に一番近いんじゃないかということになりました」(早川さん)
北欧人の働き方の一例を紹介すると、2023年11月に『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(針貝 有佳 著、PHP研究所)という書籍が発刊されています。同書によれば、デンマーク人は「プライベートが充実しているからこそ、良い仕事ができる」と考えているため、仕事よりもプライベートや家族の優先順位が高いそうです。また、ほとんどの人が「自身の成長のために仕事をしている」と考えているようです