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部門間連携

部門間連携×いきいき(3)~バタフライ型の部門間連携、さらにその先へ

部門間連携による組織の活性化を述べる3回シリーズ。第2回では部門間連携を3つのステージに分け、そのステージ1となる「部門を超えた交流の活発化」の具体的な取り組みを紹介しました。第3回ではステージ2「ダイヤモンド型の部門間連携」、ステージ3「部門横断的なコラボレーション」の具体的な取り組みを紹介します。

「ステージ1:部門を超えた交流の活発化」で部門間の相互交流・相互理解が深まれば、次のステージとしてダイヤモンド型の部門間連携に取り組みやすくなります。

ダイヤモンド型の部門間連携の事例を紹介します。
※事例番号は第2回の事例からの続き

事例5:部門間の情報格差を埋める「バディ制度」

部品製造業E社(従業員数約50名)は、本社工場とそこから少し離れた第二工場という2箇所の生産拠点を持っています。第二工場は製造工程の下流にある検査、出荷を担っています。しかしながら、本社からの情報が滞ることがあり、そのために出荷が遅れ、残業時間が長くなるなどの弊害が出ていました。その一方で、「第二工場での不良品チェックはできて当たり前」と思われがちであったため、第二工場からコミュニケーションの改善(情報格差の解消)を求める声が多く出ていました。

そんな工場間のコミュニケーション向上策(情報共有度の向上)として導入されたのが「バディ制度」です。「バディ制度」は、本社工場の製造担当社員とその上司(課長・主任)がペアとなって、第二工場の品質管理担当社員と情報交換を行う仕組みです。本社工場には製造が7ラインありますが、ライン毎にバディを結成しました、この情報交換により、本社工場側は何が不良として出やすいのかを把握することで、工程の見直しに着手し、第二工場側は本社工場で不良が生じる要因を理解することで、不良の特性への理解が深まりました。こうした取り組みの結果、不良率が改善されると同時に、情報共有度の向上による作業効率化によって、残業時間も大幅に減少しました。

事例6:管理職同士が部門を超えて会社の方向性を検討

機械製造業F社(従業員数約150名)では、部門間のコミュニケーションが長年の課題でした。F社の組織構成は、製品分野別に4つの部門から構成されていますが、業務内容が大きく異なるため、部門ごとに〝まったく文化の異なるものづくり”を行っているという実態がありました。入社以来、他部門の社員とまったく交流がないというのが普通の状態でした。

こうした状態を打破する第一歩として、F社では外部から専門の講師・ファシリテーターを招き、管理職向けの研修・ワークショップを実施しました。研修・ワークショップを通じて、異なる部門の管理職同士が交流を持ち、つながるようになりました。その結果、管理職同士が部門を超えて会社の方向性を検討したり、部門間で協働して仕事を進めるケースも誕生しました。

また、ワークショップでは管理職たちが知的資産経営報告書の作成に取り組みました。具体的には、財務諸表などには表れない会社の強みを資産として明らかにするものです。各部門の視点から、自社の強みを棚卸しし、それを集約・共有することで、今まであまり知られていなかった会社の魅力や強みが続々と再発見されました。この取り組みは係長向けにも実施され、次々と〝全国レベル”の自社の実力が判明し、「地方の小さな会社だと思っていたけど、実は、結構すごいじゃないか」との声が従業員の間で聞かれるようになりました。各部門の持つ強みを全社的に共有することが、自社への誇りを高め、社員一人ひとりの意識を高めました。

事例7:ピアボーナスの導入による部門間の協力促進

企業向けサービス業のG社では、部門間の協力促進のためにピアボーナスの制度を導入しています。ピアボーナスとは、従業員同士が送り合う 良い行動への感謝・称賛および少額のインセンティブの仕組みです。具体的にはスマートフォン・アプリを用いて、自分の業務に貢献・協力してくれた他の社員に感謝・称賛のメッセージ・拍手や、少額の成果給を送るものです。ただし、経済的対価の獲得が目的とならないように1回に送る成果給の金額は少額に抑えられています。ピアボーナス導入の結果、G社では感謝の言葉を通して、部門同士の互いへのリスペクトが高まり、部門間協力が促進されるようになりました。

2.「ステージ3:部門横断的なコラボレーション」事例

部門間連携をさらに推し進めると、部門横断的なコラボレーションを活かした組織運営が可能となります。さらに部門別の縦割り組織を廃止し、全従業員が経営参加するフラット型の組織運営を選択する企業も現われています。

部門横断的なコラボレーションの事例を紹介します。

事例8:自発的に他部署へ応援に入る風土を醸成

H社(従業員数約30名)は作業用器具の製造・販売を行っています。H社組織は製造、物流、営業、総務、事務、広報の部門から構成されていますが、多くの社員がメインの所属に加え、他部門も兼任しています。そして、各部門の週単位の業務状況が全社員に共有され、応援が必要な部門があれば、計画的かつ自発的に応援に入る風土が醸成されています。

また、F社では部門横断的な活動として、全社員参加の社内委員会があります。3S(整理・整頓・清掃)活動を推進する委員会、顧客対応の向上を検討する委員会、社員間の交流や社内イベントを担当する委員会があり、社員はいずれかの委員会に属してします。部署横断的にメンバーで構成される社内委員会の活動によって、各社員に積極的に他部門を知ろうとする姿勢が生まれました。

事例9:全社員参加の部門横断的な小集団活動

プラスチック製品製造業のI社(従業員数約240名)では、全社員参加の部門横断的な小集団活動を40年以上続けています。4つの生産拠点を持つI社では、多種多様なプラスチック製品を製造しています。そんな中で、「より楽に楽しく」「より正しく正確に」「より早く」「より安心安全に」をテーマにした小集団活動を継続的に実施しています。活動は半期単位(年2回)で実施され、全社員参加で部門横断的な構成を含む1 0 人前後のグループが編成されます。グループで達成すべき目標を決め、毎月2回のミーティングを通して分析、対策、評価を実施します。途中、対策や効果などについて分かりやすくまとめられているかを評価する中間発表を行い、最後に全社員が参加する成果発表会において発表。優秀チームは表彰されます。I社経営者はコスト削減などの成果よりも、働きやすい環境を自分たちで追い求める風土づくりを意図して、この小集団活動を開始しました。

課題の抽出方法やミーティングの進め方などはマニュアル化されており、新入社2年目社員がグループのリーダーを務めることもあります。その意味で、次世代リーダー育成の場としても小集団活動は機能しています。また、部門横断的な社員同士の交流が生まれると同時に、他部門社員ともチームワークで仕事をするコミュニケーション能力が醸成される場にもなっています。

事例10:上下関係も指示命令もないティール組織

アパレルECを展開するJ社(従業員数約180名)には、上下関係(役職)がなく、社員一人ひとりが自らの役割を模索して働く、フラットな組織による事業運営を行っています。社員であれば誰でも参加できる経営会議が最高意思決定機関です。経営者は自社組織をティール組織と位置づけています。
※ティール組織
メンバー全員が意思決定権を持つ(階層構造を持たない)フラットな組織であり、ベストセラー書籍『ティール組織』(フレデリック・ラルー著、2018年)で提示された組織形態。同書では人類の歴史における組織の進化を、レッド・アンバー(琥珀色)・オレンジ・グリーン・ティール(青緑色)という色の波長で表現し、その最新の進化型組織を「ティール組織」と位置づけた。同書ではティール組織を実現する3要素として、「セルフマネジメント(Self-management)」「ホールネス(Wholeness)」「エボリューショナリー・パーパス(Evolutionary Purpose)」の3つが挙げられている。

ティール組織は、決められた役割ごとに縦割りで編成されたヒエラルキー組織に対比されるフラット組織の一種です。そのため、そもそも部門(セクション)という概念が希薄であり、それよりも社員一人ひとりが自らの役割を模索し、能力の最大限発揮する「ホールネス」や「セルフマネジメント」が重視されます。その意味でセクショナリズムが生じ得ない組織形態といえるかもしれません。

以上、3回シリーズで「部門間連携の推進」による組織の活性化について述べました。VUCA時代を乗り切るためには、部門の枠を超えたセレンディピティによる「知のコラボレーション」が企業を救う斬新なアイデアの創造につながるはずです。そのためにも、「知のコラボレーション」が生まれやすい場づくりや、組織風土の醸成に努めましょう。

(著者:タンタビーバ パートナー 園田 東白)

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