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自社ファン度

いきいき組織づくりのキーワード 「自社ファン度(自社大好き度)」

いきいき組織づくりのキーワード 「自社ファン度(自社大好き度)」

キーワードから「いきいき組織づくり」を考えるシリーズ。今回のキーワードは「自社ファン度(自社大好き度)」です。

「自社ファン度(自社大好き度)」とは、社員の自社大好き度合いを表す指標です。組織の活性化・健全化を実現させるための指標として、タンタビーバが提唱するものです。

似たような指標に「従業員エンゲージメント」「従業員ロイヤリティ」といったものがありますが、「大好き」という感情をモノサシとした「自社ファン度」は、誰にとってもわかりやすく、同時に柔らかくポジティブなイメージを抱きやすいので、従業員が受け入れやすい指標であるといえます。

「自社ファン度」(社員の自社大好き度合い)

2.「自分の会社が好き」な人の割合、一般社員でわずか3割以下

タンタビーバでは、2020年10月に法政大学大学院 石山恒貴教授の監修の下、「自社への“ファン度合い”に関する1,000人調査」を実施しました。その結果、「自分の会社が好き」な人の割合は一般社員で3割以下、「会社に行けると思うとワクワクする」人の割合は一般社員で2割以下、であることが判明しました。

法政大学大学院 石山教授監修 「自社への“ファン度合い”に関する1000人調査(2020年)」より

法政大学大学院 石山教授監修 「自社への“ファン度合い”に関する1000人調査(2020年)」より
http://tantaviva.com/lab/20201008summary/

別に社員が会社のことが好きではなくても、会社へ行くことにワクワクしなくても、仕事の成果さえ上げてくれればそれでかまわない、と考える経営者もいるかもしれません。

しかしながら、会社が大好きで、会社へ行くことにワクワクする社員には、高いモチベーションに基づく高パフォーマンスや、周囲のメンバーへのポジティブな影響を期待できます。すなわち、「自社ファン度」の高い社員(自社ファン社員)は、いきいき組織づくりに貢献します。

「自社ファン社員」のいきいき組織づくりへの貢献について、3つの視点から掘り下げていきます。

3.「自社ファン社員」のいきいき組織づくりへの貢献①「情動感染」

最初の視点は、心理学で「情動感染」と呼ばれる現象から、「自社ファン度」ののいきいき組織づくりへの貢献を説明します。

3-1. 「情動感染」とは

「情動感染(emotional contagion)」は、アメリカの心理学者エレイン・ハットフィールドらが提唱した概念です。
「子供の笑顔を見ると、自分も優しい気持ちになる」「不機嫌な人を見ると、自分も不快な気持ちになる」といったことは、誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。このように、「ある人の感情が周囲の人の感情にも伝わっていくこと」が「情動感染」と呼ばれる現象です。

情動感染のメカニズムは、以下のように説明できます。

  1. 他者が発する言葉、声のトーン、表情、身体動作などから特定の感情を知覚する
  2. 他者の特定の感情に対して、自分も同じ経験をしたように感じる
「情動感染」とは

こうした情動感染に影響しているが、「ミラーニューロン」です。「ミラーニューロン」は、イタリアの神経生理学者ジャコモ・リッツォラッティらが1996年に発見した脳の前頭葉の運動前野にある神経細胞(ニューロン)です。相手の言動を見たり、聞いたりするだけで、自身も同じ言動をとったように、同じ脳の領域が活性化する特殊な細胞です。他人の行為を鏡(ミラー)のように脳内に映し出すため、このように呼ばれています。

ミラーニューロン

3-2. 「情動感染」に基づく、「自社ファン社員」の有効性

「情動感染」に基づき、「自社ファン社員」のいきいき組織づくりへの貢献を説明します。

  1. 自社ファン社員が、「会社が好き」という感情に基づき、ポジティブな言動をとる。
  2. 自社ファン社員のポジティブな言動に接した周囲の社員が、情動感染で自分も「会社が好き」という感情を経験したように感じる。
  3. その結果、職場全体にポジティブな雰囲気が醸成される。すなわち、組織のいきいきが増す。

心理学者のダニエル・ゴールドマンは「感情は風邪のように伝染する」と述べています。私たちは自分の意思に関わらず、他者の感情を瞬時に知覚し、その影響を受けているのです。「会社が大好き」という社員が一人いるだけで、その感情が伝染し、「自社ファン社員」が増殖していく可能性があるといえます。

「情動感染」に基づく、「自社ファン社員」の有効性

4.「自社ファン社員」のいきいき組織づくりへの貢献②「拡張-形成理論」

続いて、「拡張-形成理論」というポジティブ心理学の理論を用いて、「自社ファン度」ののいきいき組織づくりへの貢献を説明します。

4-1. 「拡張-形成理論」とは

「拡張-形成理論(broaden-and-build theory)」は、著名なポジティブ心理学者であるバーバラ・フレドリクソンによって提唱された理論です。

この理論では、ポジティブな感情の経験がポジティブな結果を生み、そのことがさらにポジティブな感情を経験しやすくなる、という好循環の形成を説明しています。

具体的には、以下のような流れです。

1.ポジティブな感情の経験 職場・仕事でポジティブな感情が生じる。
2.思考・行動の一時的な拡張 ポジティブな感情が一時的に物事の見方を拡張させたり、行動範囲を拡張させたりする(思考の枠が広がる、行動の幅が広がる)。
3.個人資源の形成 物事の見方、行動範囲の拡張が、新たな個人資源(知識・ノウハウ、スキル、自己効力感、人的ネットワーク等)の形成につながる。
※自己効力感
何かの問題や課題に直面したとき、「自分なら乗り越えられる」「やればできる」と感じられる力
4.成長やウェルビーイングの促進 さまざまな個人資源が形成されることで、自身の成長やウェルビーイングを実感しやすくなる。さらに、成長やウェルビーイングが促進されることで、ポジティブな感情を経験しやすくなる。
※「ウェルビーイング(well-being)
心身ともに健康で、かつ社会的にも満たされた状態をさす。

4-2. 「拡張-形成理論」に基づく、「自社ファン社員」の有効性

「拡張-形成理論」に基づき、「自社ファン社員」のいきいき組織づくりへの貢献を説明します。

  1. 社員が「◯◯だから、ウチの会社のことが好き」というポジティブ感情を経験する(「自社が好き」というポジティブ感情を経験)。
  2. ポジティブ感情が社員の思考・行動範囲が拡張させ、会社を「いきいき」させる行動(意欲的・挑戦的な行動、高い問題解決能力の発揮、周囲との良好なコミュニケーションなど)をもたらす(いきいき行動の一時的な拡張)。
  3. 社員の「いきいき行動」が、本人の能力向上、「うまくできた」という自信の醸成、周囲との関係性の強化などをもたらす (いきいき資産の形成)
    ※いきいき行動の蓄積によって形成される個人的資産を、ここでは「いきいき資産」と呼ぶ
  4. 社員が「成長できた!」「幸福感が高まった!」といった実感しやすくなる(成長やウェルビーイングの促進)。
  5. 成長やウェルビーイングの促進により、「ウチの会社のことが大好き」というポジティブ感情を益々経験しやすくなり、「いきいき」行動が増幅していく(いきいきのスパイラルアップ)。

このように「拡張-形成理論」に基づき、「ウチの会社のことが好き」というポジティブ感情を起点に、いきいき行動を一時的に拡張させ、いきいき資産を形成させることで、成長やウェルビーイングの実感を高めていくスパイラルアップを説明することができます。こうした流れは「いきいきスパイラルアップ」と呼べるかもしれません。

「いきいきスパイラルアップ」は、個人レベルでのいきいきを説明したものですが、3で述べた情動感染を踏まえれば、個人レベルのいきいき増幅が、周囲に伝播していくことで、いきいき組織づくりに貢献すると説明できます。

5.「自社ファン社員」のいきいき組織づくりへの貢献③「自社ファン度」の高い社員の特徴

最後に、「自社ファン度」の高い社員の特徴から、「自社ファン社員」のいきいき組織づくりへの貢献を説明します。

タンタビーバの調査で、「自社ファン度」の高い社員は、「自分の会社が好き」「自社を誇りに思う」「自社にはワクワクが溢れている」「自社に満足している」という思いに加えて、「自社の商品・サービスが好き」「職場の仲間が好き」「自社をよくしたい」「自社の魅力を伝えたい」「顧客の笑顔が見たい」という思いも強いことが明らかになりました。

後者の5つの思いは、自発的な改善行動、積極的な情報発信、チームの活性化、顧客サービスの向上などに結びつくものであり、それらの行動が組織に「いきいき」をもたらします。

以上、組織の活性化・健全化を測定する新たな指標としての「自社ファン度」と、「自社ファン度」の高い社員(自社ファン社員)のいきいき組織づくりへの貢献について述べてきました。

あなたの会社も「自社ファン度」の高い社員を増やしてみませんか。

(著者:タンタビーバ パートナー 園田 東白)

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