従業員体験 2025.7.25 いきいき組織づくりのキーワード 「EXとCXの連動(従業員体験と顧客体感の好循環形成)」 #オキシトシン #サービス・プロフィット・チェーン #サティスファクション・ミラー #タッチポイント #ボトムアップ #内発的動機づけ #対話 #従業員体験(EX) #従業員満足(ES) #心理的距離 #感動体験 #現場の声 #知的資産 #裁量権 #顧客体験(CX) #顧客満足(CS) キーワードから「いきいき組織づくり」を考えるシリーズ。今回のキーワードは「EXとCXの連動」です。 目次1.「EXとCXの連動」とは1-1.顧客満足、顧客体験のために従業員が疲弊していないか1-2.顧客体験(CX)と従業員体験(EX)1-3. EXとCXは連動する2.EXとCXの好循環/悪循環2-1. EXとCXの好循環事例2-2. EXとCXの悪循環事例2-3. EXとCXの連動には従業員の内発的動機づけが必要3.EXとCXの連動の有効性を後押しする概念・考え方3-1. サティスファクション・ミラー3-2 絆ホルモン「オキシトシン」の分泌促進3-3. サービス・プロフィット・チェーン4.EXと CXの連動の成功ポイント4-1. 感動を生むタッチポイントづくりの3条件4-2 感動体験の社内共有、感動体験のレベルアップ 1.「EXとCXの連動」とは 1-1.顧客満足、顧客体験のために従業員が疲弊していないか 「顧客満足度の向上のために、お客様に感動体験を提供せよ」 顧客満足(CS)向上のために顧客体験(CX)を重視する企業が増えています。 CS向上、CX向上を考える場合、従来にはないサービスを追加する、接客の質を向上させるなど「顧客ニーズにきめ細かく対応する」ことを検討するケースが多いと思います。 そこで経営者の方に以下の問いを投げかけたいと思います。 「顧客満足、顧客体験のために従業員が疲弊していませんか」 CS向上、CX向上の取り組みを優先するあまり、従業員への配慮が後回しになっているケースがあります。それが従業員にとって大きな負荷となる場合、「顧客体験(CX)を向上させる取り組みが、結果として従業員体験(EX)を低下させる」ことになってしまいます。 本来は「従業員体験(EX)と顧客体験(CX)を連動させ、両者をともに向上させる」べきです。 以前に「従業員体験(EX)」をキーワードに記事を書きましたが、その延長で今回は「EXとCXの連動」を組織活性化の観点から述べたいと思います。 関連記事 いきいき組織づくりのキーワード 「従業員体験(Employee Experience)」 https://tantaviva.com/ikiikilab/ikiikilab-all/20250522-01/ 1-2.顧客体験(CX)と従業員体験(EX) ここで「顧客体験(CX)」と「従業員体験(EX)」の概念について整理しましょう。 (1)顧客体験(Customer Experience:CX)とは 顧客体験(Customer Experience:CX)とは、顧客がある商品・サービスに興味を持ち、購入を検討し、実際に購入・利用するという一連の流れに関わるすべての企業との接点(顧客接点)で形成される体験価値を指します。この場合、商品・サービスそのものだけでなく、接客態度、アフターフォロー、Webサイト、付随サービスなど、あらゆる接点がCXを形成します。 CXの向上は、顧客満足(CS)の向上に直結するものです。 (2)従業員体験(Employee Experience:EX)」とは 従業員体験(Employee Experience:EX)については、以前の記事でも取り上げましたが、再確認しておきます。従業員体験とは、従業員が企業に関わるすべての接点(タッチポイント)を通じて形成される体験価値を指します。 EXの向上は、従業員満足(ES)の向上に直結するものです。 1-3. EXとCXは連動する EXとCXの連動について説明します。 基本は、「従業員体験の向上が従業員満足をもたらし、そのことがモチベーションとなって質の高いサービスを提供することで、顧客体験および顧客満足が高まる」という「EX向上→CX向上」ということになります。 逆の「CX向上→EX向上」という流れも忘れてはいけません。「質の高い顧客体験に満足・感動した顧客の姿を目にし、顧客の声を聞くことで従業員も感動し、従業員体験および従業員満足が高まる」というものです。 2.EXとCXの好循環/悪循環 EXとCXの好循環/悪循環を具体例で確認しましょう。 2-1. EXとCXの好循環事例 最初にEXとCXの好循環の具体例です。 営業メンバーが、顧客の反応から顧客体験(CX)の重要性に気づき、CXの向上に努めるようになった結果、自らの従業員体験(EX)も向上し、EXとCXの好循環が形成されました。 2-2. EXとCXの悪循環事例 次にEXとCXの悪循環の具体例です。 EXを無視したCX改善が裏目に出てしまい、EX、CXともに低下してしまう悪循環に陥りました。 2-3. EXとCXの連動には従業員の内発的動機づけが必要 2-1の好循環と2-2の悪循環の最も大きな違いは、従業員の内発的動機づけの有無だと思われます。すなわち、従業員が内面から「お客様に喜んでもらいたい」と考え、自発的な行動を起こすことが、顧客体験(CX)の向上につながり、そのことが自らの従業員体験(EX)の向上にもつながるというものです。 ※「内発的動機づけ」 「楽しみたい」「やりたい」といった、個人の内的な欲求が自発的な行動を引き起こすモチベーションをさす。報酬や評価、罰則や懲罰といった、外部からの働きかけによるモチベーションである「外発的動機づけ」と対比される。アメリカの心理学者エドワード・デシが1970年代に提唱した。 3.EXとCXの連動の有効性を後押しする概念・考え方 EXとCXの連動の有効性を裏付ける概念・考え方をいくつか紹介します。 3-1. サティスファクション・ミラー 最初に紹介するのが「サティスファクション・ミラー」です。 サティスファクション・ミラーとは、顧客満足度と(顧客との接する)従業員の満足度の「合わせ鏡」のような関係性をさします。すなわち、顧客との接点において、従業員が良いサービスを提供した結果、顧客の満足度が高まると、従業員自身の満足度も高まり、さらに良いサービスを提供しようとするといった、顧客満足度と従業員満足の相互に影響し合う関係性のことです。 EXとCXの連動で考えると、従業員が良いサービスを提供することで顧客体験(CX)が高まり、顧客からの歓喜・感謝の反応・フィードバックがあることで従業員体験(EX)が高まる、という関係になります。 3-2 絆ホルモン「オキシトシン」の分泌促進 次に紹介するのは、神経伝達物質「オキシトシン」です。 オキシトシンは、「愛情ホルモン」または「絆ホルモン」とも呼ばれ、人との信頼・感謝・つながりを感じるときに脳内で分泌されます。たとえば、親切な行為をすると、行為をした人、行為をされた人の両者からオキシトシンが分泌されます。また、オキシトシンが分泌されると共感や利他的行動が促進されます。 また、オキシトシンには「正のフィードバックループ」が働くことが知られています。すなわち、脳内で一度オキシトシンが分泌されると、より分泌しようとする仕組みが働きます3-1のサティスファクション・ミラーで考えると、以下の図のように従業員と顧客のつながりが強化されます。 オキシトシン分泌を踏まえれば、EXとCXを連動させるためには、従業員と顧客の間で、お互いの内面から湧き上がる心の交流が不可欠であるといえるのではないでしょうか。これは2-3で述べた、従業員の内発的動機づけの必要性とも合致するものです。 3-3. サービス・プロフィット・チェーン 最後に紹介するのは、「サービス・プロフィット・チェーン」と呼ばれるフレームです。 このフレームは1994年にハーバード・ビジネススクールのジェームズ・ヘスケット、アール・サッサーらが提唱した従業員満足、顧客満足、業績の連鎖を示すものです。 具体的には、職場環境の整備、従業員の処遇改善、従業員教育の充実などの「内部サービスの質の向上」(従業員体験の向上)を起点に、「内部サービスの質の向上→従業員満足の向上→サービス品質向上(顧客体験の向上)→顧客満足の向上→企業の業績向上」という好循環を形成するものです。 このフレームには、EXとCXの連動が包含されていると同時に、EXとCXの連動が業績向上にも寄与することも示されています。 4.EXと CXの連動の成功ポイント EXと CXの連動を実現させるための成功ポイントを挙げておきます。 4-1. 感動を生むタッチポイントづくりの3条件 3-2で述べたように、EXと CXの連動の本質は、従業員と顧客の接点(タッチポイント)における感動体験であり、それは両者の心の交流によって生まれるものです。 タッチポイントで感動体験が生まれるためには、以下に示す3つの条件が必要だと思います。 条件1:従業員と顧客の心の交流が生まれやすいビジネスの仕組みづくり 条件2:従業員が自発的に行動しやすくする裁量権の付与 条件3:顧客の感動や喜びを最優先で考える文化の醸成 株式会社王宮 様 「ホワイト企業大賞」表彰企業のいきいき組織づくり https://tantaviva.com/ikiikilab/ikiikilab-all/20240823a-1/ 感動を生むタッチポイントづくり事例2:株式会社王宮 以前に記事紹介した株式会社王宮様。インバウンド対応のビジネスホテルを展開しています。 2社の事例は、いずれも先に挙げた3つの条件を満たすことで、感動を生むタッチポイントづくりに成功しています。特に、マニュアル的な行動ではなく、従業員の自発的行動が感動体験につながっているという点に注目すべきだと思います。従業員が自ら考え、行動したからこそ、それが顧客にとっての感動のみならず、従業員本人にとっても感動体験になるのではないでしょうか。 4-2 感動体験の社内共有、感動体験のレベルアップ 4-1で述べたように、感動体験が生まれるタッチポイントづくりに成功したならば、それを社内で共有することも大切です。顧客との感動体験を共有することは、他社員の共感を生み、「自分も同じような感動体験をお客様に届けたい」という内発的動機づけにつながります。 また、顧客との感動体験を知的資産として捉え、共有・蓄積していくことで、組織全体として顧客体験を向上させるために何をすべきかを検討しやすくなります。 同時に、従業員同士の連携による顧客体験の向上、部門間連携による顧客体験の向上といった対応も可能となります。すなわち従業員個人レベルでは提供できない、より高度な顧客体験の提供が可能となります。 たとえば、旅館業で接客スタッフと調理部門スタッフがリアルタイムで情報共有できていれば、お客様の事情で急な料理メニュー変更の必要性が生じても、迅速に対応することができ、お客様に質の高い顧客体験を提供できます。 感動体験を通して、顧客も従業員も幸せを感じる。そんな好循環が生まれる組織づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。 (著者:タンタビーバ パートナー 園田 東白)