C社(従業員数約40名)は、ビルやマンションなどの給水設備を中心とした建築設備の法定点検や修繕業務、そしてリニューアル工事までをワンストップで行う建築設備メンテナンス業です。C社では働き方改革を明確なインセンティブ制度で実現しています。代表的な取り組みをいくつか紹介します。
①助け合う職場風土の醸成~「お助けボード」、「サンクスカード」
C社は、24時間365日体制で建築設備メンテナンスのワンストップサー/bビスを提供しています。それにもかかわらず、有給休暇取得率100%を実現しています。これを支えているのは、従業員同士が助け合う風土の醸成であり、その具体策が「お助けボード」の設置と「サンクスカード」です。
「お助けボード」は、各従業員の業務負荷をビジュアル化したボードです。社内の皆が見える場所に「お助けボード」を設置し、特定の従業員に業務が集中している場合には、他の従業員が積極的にサポートする風土を職場に根付かせました。「サンクスカード」は、助け合いのなかで、助けられた従業員が助けてくれた相手に「ありがとう」の気持ちを伝えたり、反対に、助けた従業員が助けてあげた相手に「お互い様」と支え合う気持ちを伝えるためのメッセージカードです。年間6千枚以上のサンクスカードが職場内に配布されます。
こうした助け合う風土により、「私が休んでも仲間がそれをカバーしてくれる。その分、他メンバーが休むときには私が積極的にカバーしよう」という意識が職場全体で共有され、有給休暇を取得しやすい職場環境が整備されました。助け合いは職場全体の労働時間短縮もプラスに作用しています。
②従業員による自発的提案の促進
C社では「営業ノルマ」や「個人目標」は設定していいません。その一方で、従業員は定期点検等で既存顧客へ訪問したとき、点検箇所以外も調べ、自発的に顧客への修繕提案を行っています。こうして新規獲得した修繕等の利益の1%を、半年に1回、提案を行った従業員に還元しています。
また、従業員の自発的な業務改善提案に対しても、プリペイドカードによるインセンティブを授与しています。どんな改善報告でも否定せず、すべて受け入れ、1件ごとにプリペイドカードを与えています。また年に一度、最も多くの改善報告を出した従業員に「改善報告大賞」を授与し、賞状と賞金を与えています。
このように従業員の自発的な営業提案・改善提案は、業績向上や生産性向上に大きく寄与してします。
③人事評価基準の納得感・キャリアパスの明確化
人事の評価基準に関して、経営層を含まない10名程度の従業員のみで等級基準を作成しています。そのため、評価が現実と乖離した形にならず、現場の社員にとって納得感の高いものとなっています。また、何をすれば昇格、昇給するかという従業員のキャリアパスも明確になっています。
C社の取り組みは、働きがい・働きやすさの提供が、従業員の内発的・自発的な貢献意欲を引き出すというエンゲージメントの好循環そのものと説明できます。