(1)VUCA時代への対応
現代のビジネス環境を象徴する言葉として「VUCA」があります。VUCAな時代において、企業には変化を先取りし、柔軟かつ俊敏に適応する「しなやかさ」や、正解を探すのではなく、正解を創り出す「創造性」が強く求められます。
※VUCA
「Volatility(不安定)」、「Uncertainty(不確実)」、「Complexity(複雑)」、「Ambiguity(曖昧)」の頭文字を並べたもの
そのためには、トップダウン型の意思決定のみでは限界があり、各従業員の主体的・自律的行動に基づくボトムアップ型の意思決定が必要となります。そうした従業員の主体的・自律的行動において、原動力や羅針盤となるのがパーパスです。
(2)SDGs、ESGへの対応
今やSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)を考慮した経営は、企業にとって必須です。SDGsやESGが重視するものを「社会価値」と捉えた場合、顧客は社会価値の高いブランドを選好する傾向が高まると予想され、自社事業における社会価値を高めることがブランディングにおいて重要となってきています。そこで自社ビジネスを通して社会をより良くするための旗印としてパーパスが大きな役割を果たします。
(3)ミレニアル世代・Z世代の価値観
これから企業の将来を担うのはミレニアル世代(1980〜1990年代半ばに生まれた世代)・Z世代(1990年半ば~2010年代生まれの世代)の人材です。バブル経済崩壊以降の厳しい経済状況下で育ち、インターネットやSNSによる情報収集・情報交換が当たり前の世代です。
これらの世代は、社会問題への関心が高い傾向にあります。地球環境問題への取り組みやダイバーシティ(多様性)の考え方が当たり前に刷り込まれている世代であり、SDGsへの関心も高い傾向にあります。また、インターネットやSNSで育った世代であり、自分に合った価値観への共感を大切にしています。多様性が当たり前の世代だからこそ、共感できるものを重視するのかもしれません。
こうしたミレニアル世代・Z世代の人材を確保・定着させるためには、自社ならではの社会的意義を示す魅力的なパーパスを掲げ、共感を得ることが重要となります。
(4)リモートワーク時代における組織の一体感
コロナ禍によって働き方や企業環境が大きく変化し、リモートワークが当たり前の時代になりました。リモートワークには多様な働き方の実現やワークライフバランスの確保といったメリットがあります。その一方で、お互いが見えづらく、つながりにくい環境下で、組織としての価値観の共有や一体感の確保が難しくなっている面があります。そうした状況下で、組織の一体感を確保する求心力としてのパーパスへの関心が高まっています。