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パーパス

いきいき組織づくりのキーワード 「マイパーパス」

いきいき組織づくりのキーワード 「マイパーパス」

キーワードから「いきいき組織づくり」を考えるシリーズ。今回のキーワードは「マイパーパス」です。

1.「マイパーパス」とは

1-1. 「マイパーパス」の定義

近年、「マイパーパス(My Purpose)」という言葉を聞く機会が多くなりました。マイパーパスは、企業で働く個人(従業員)一人ひとりの存在意義を示すものです。「自分の人生の目的は何か」「自分は何のために働いているのか」「自分が大切にしているものは何か」といった問いかけから導かれるものです。

マイパーパス

よりソフトに表現するならば、「自分がいきいきわくわくする原動力は何か」ということかもしれません。

また、存在意義という点に着目すれば、社会や組織との関わりのなかで、自分がどのような使命を果たすべきかということが含有されているといえるでしょう。

1-2. マイパーパスのイメージ

具体的なイメージを膨らませるために、いくつかマイパーパスの表現を例示します。

マイパーパスの表現イメージ

自分の仕事、大切な価値観などを関連づけると、実際にはもう少し長いフレーズになるかもしれませんが、おおよその表現イメージはご理解いただけると思います。

1-3. 現代社会とマイパーパス

なぜマイパーパスが必要なのか。これは現代社会の状況が影響していると思われます。

インターネット、SNS、スマホが当たり前となったことで、個人が自己表現しやすくなり、それを手軽に情報発信し、他者と共有することが可能となりました。こうした自己表現をする上で、私たちは「自分は何者か」「自分にとって大切な価値は何か」を問い直し、自己について考える機会が増えています。

一方、ネットと常時接続し、情報過多の状況に置かれる中で、私たちは「アテンションエコノミー(※)」の影響を受けやすくなっています。その結果、過剰な情報の流れにより、「自分は何をしたいのか」「自分にとって大切なものは何か」を見失ってしまうことがよくあります。
※「アテンションエコノミー」
「注意経済」とも呼ばれ、人々の注意を引きつけることが、経済価値を持つ現象をさす。アテンションエコノミーにおいては、情報の質よりも、人の注目それ自体が価値を持つ。

このように現代社会がもたらす「自分を表現しやすくなったが、自分を見失いやすい」という矛盾した状況が、マイパーパスへの要請を高めているのではないでしょうか。

現代社会とマイパーパスへの要請

1-4. 企業におけるマイパーパスへの取り組み事例

本来マイパーパスは個人主導で明らかにするものですが、近年では企業が自社従業員のマイパーパス作成を支援し、マイパーパスを全員で共有する取り組みも多くなっています。

いくつか具体的な取り組み事例を紹介します。

事例1:三菱電機株式会社
国内外グループ会社の従業員約15万人を対象としたパーパスプロジェクトを立ち上げています。同プロジェクトは、従業員一人ひとりがマイパーパスを考え、企業理念/パーパスと向き合うことで、変革の原動力へ繋げていくことが狙いです。
(出所)https://www.mitsubishielectric.co.jp/our-stories/articles/focus-3/

事例2:三井金属鉱業株式会社
三井金属グループで働く一人ひとりが「地球を笑顔にする。」ために、 マイパーパスを掲げ、それをパーパススペシャルサイトで公開しています。これは「探索精神と多様な技術の融合で、地球を笑顔にする。」という同社のパーパスを起点に、従業員一人ひとりがマイパーパスを作成するというアプローチです。また、具体的なマイパーパスの表現方法を理解する上でも役立ちます。
(出所)https://www.mitsui-kinzoku.com/purpose/my-purpose/

このように、企業が従業員のマイパーパス作成を支援することが、いきいき組織づくりにも役立ちます。

2.マイパーパスの明確化のメリット①エンゲージメント向上

いきいき組織づくりを考える場合、マイパーパスの明確化がエンゲージメント向上に寄与する点に着目すべきでしょう。

ここでは「キャリアオーナーシップ」「パーパス(経営理念)とマイパーパスの重なり」という視点から、マイパーパスのエンゲージメント向上への寄与を説明します。

2-1. キャリアオーナーシップとマイパーパス

労働市場の流動化が高まり、「転職することは当たり前」になった今日において、自律的にキャリアを形成する「キャリアオーナーシップ」という考え方が重視されるようになりました。

終身雇用や年功制を背景に、個人のキャリアを企業に依存していた時代から、個人が自分主導でキャリアを切り拓いていく時代にシフトしてきています。

キャリアオーナーシップは、個人・企業の双方にとって意義があります。個人はキャリアオーナーシップを持つことで、自分らしいキャリアや働き方を実現しやすくなります。一方、企業は個人のキャリアオーナーシップを支援することがエンゲージメント向上につながります。

2020年5月に経済産業省から公表された、人的資本経営のガイドラインと呼べる『持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書(人材版伊藤レポート)』には、以下のように記述されています。

「企業は、画一的なキャリアパスを用意するのではなく、多様な働き方を可能にするとともに、働き手の自律的なキャリア形成、スキルアップ・スキルシフトを後押しすることが求められる。」

「個人は、キャリアを企業に委ねるのではなく、キャリアオーナーシップを持ち、自らの主体的な意思で働く企業を選択することが求められる。同時に、人生100年時代の中で、社会で活躍する期間が長くなることも見据え、社会人になった後も継続的な学び直し、時代にあったスキルセットを身につけることが求められる。」

(出所)経済産業省『持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書(人材版伊藤レポート)』(2020年5月)

マイパーパスはキャリアオーナーシップと密接に関係しています。

マイパーパスが明確であれば、それが自らのキャリアの方向性を決める重要な指針となります。その結果、キャリアオーナーシップが強化され、自分らしいキャリアを築きやすくなります。言い換えれば、自律的にキャリアを形成するためには、自ずとマイパーパスを自問自答する必要があるといえます。

整理すると、マイパーパスを明確化することで、個人のキャリアオーナーシップが強化され、それを企業が支援することで従業員のエンゲージメントが向上する、という図式を描くことができます。

マイパーパスの明確化

2-2. パーパス(経営理念)とマイパーパスの重なり

企業経営においても、「自社はなぜ存在するのか」という社会における自社の存在意義を示す「パーパス(Purpose)」の概念が注目されています。パーパスを重視する「パーパス経営」という経営スタイルを志向する企業も現れ、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」と並び経営理念を構成する典型的な要素として認識されるようになっています。

パーパスもマイパーパスも、自らの存在意義を示すという点では共通しています。VUCA時代という先が読めないビジネス環境のなかで、企業も個人も自分がどこへ進むべきか迷子にならないように、自らの存在意義を問い直し、それを拠り所にする必要性が高まっているといえます。

パーパスとマイパーパスの関係をエンゲージメント向上の観点から考えた場合、自社のパーパスと従業員のマイパーパスの重なりが広がるほど、企業と個人(従業員)の調和が図られ、エンゲージメントの向上を図りやすくなります。ここではより汎用的に検討できるように、自社のパーパスを(パーパスを含む)経営理念と置き換えて考えてみましょう。

経営理念とマイパーパスの重なり

自社の経営理念と従業員のマイパーパスの重なりを広げるためには、ワークショップやキャリア面談などで、両者のすり合わせを行う場を設けることが有効です。

3.マイパーパスの明確化のメリット②生産性向上、自己成長促進

マイパーパスの明確化は、エンゲージメント向上以外に、生産性向上、自己成長促進にも寄与します。

3-1. マイパーパスを起点とした生産性向上

従業員が自社の経営理念と自らのマイパーパスとの重なりをある程度見出すことができると、、従業員はマイパーパスを起点として仕事をポジティブに意味づけしやすくなります。その結果、モチベーションや目標達成意欲が高まると同時に、自律的な行動が促進され、生産性の向上を期待できます。

マイパーパスを起点とした生産性向上

従業員が慣れないうちは、上司などがポジティブな意味づけをガイドする必要があるかもしれませんが、「ジョブ・クラフティング」の手法などを習得すれば、従業員自らが自発的に仕事のポジティブな意味づけができるようになります。

※「ジョブ・クラフティング」
従業員が自分主導で仕事の内容、仕事のやり方、仕事の意味づけなどを変えていく手法をさす。

3-2. マイパーパスを起点とした自己成長促進

マイパーパスに基づき、自らが望むキャリアを描くことができていれば、そのキャリア・デザインから逆算して、「そのキャリアを実現するために、どのようなスキルを獲得する必要があるのか」を従業員が強く意識するようになり、それに基づく積極的なスキル習得を期待できます。

また、キャリア面談などで、上司が従業員の望むキャリアと現在の仕事を紐づけることで、業務経験を通した自己成長を促進しやすくなります。

マイパーパスを起点とした自己成長促進

4.マイパーパスの明確化のデメリット

ここまでマイパーパスの効果を説明してきましたが、マイパーパスを明らかにすることで弊害が生じるおそれもあります。

4-1. 自社の経営理念とマイパーパスのギャップ発生への対処

自らのマイパーパスと自社の経営理念との間に大きなギャップがある場合、その従業員は「自分はこの会社にいる必要なない」という思いが強まり、離職リスクが高まるおそれがあります。また、近年注目されている「静かな退職(Quiet Quitting)」状態の従業員も、自社の経営理念とマイパーパスの間にギャップが生じるでしょう。

※「静かな退職(Quiet Quitting)」
仕事に対するやりがいや熱意はなく、淡々と必要最低限の仕事をこなす働き方をさす。アメリカの調査会社によれば、世界の労働者の約6割が「静かな退職」状態にある調査結果がある。

自社の経営理念とマイパーパスのギャップ発生への対処

このように書くと、マイパーパスの明確化を躊躇する経営者・経営幹部もいるかもしれません。しかしながら、そのような対処は単に問題が顕在化することから目を背けているにすぎません。むしろギャップの存在が明らかになることが、問題解決の第一歩となり、どのようにしたらギャップを解消・縮小できるのかを検討できます。

4-2. 「マイパーパスは変化するもの(変化させてもかまわないもの)」という柔軟性の付与

経験の浅い若手などがマイパーパスを固定化してしまうことには注意が必要です。「計画的偶発性理論」が示すように、キャリアには「偶然の出来事・出会いによって決定される」という側面があり、経験しないと見えないものがあります。したがって、「マイパーパスは変化するもの(変化させてもかまわないもの)」という柔軟性を持たせることも大切です。

※「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」
「個人のキャリアの8 割が予期しない出来事や偶然の出会いによって決定されている」というもの。アメリカの心理学者・教育学者であり、スタンフォード大学名誉教授のジョン・クランボルツによって提唱された。

「マイパーパスは変化するもの(変化させてもかまわないもの)」という柔軟性の付与

5.マイパーパスの作成方法

企業が従業員のマイパーパス作成を支援する場合、作成方法を誘導しすぎないように留意しましょう。本来、マイパーパスは従業員が自らの価値観に基づき自由に作成すべきものです。したがって、企業側が「この手順で作成してくだい」のように誘導しすぎると、従業員に「やらされ感」が生じてしまい、偽りのマイパーパスとなるおそれがあります。

5-1. マイパーパス作成の視点

一方で、「自由にマイパーパスを作成してください」と促しても、戸惑う従業員が出てしまうことも事実です。そこでマイパーパス作成のガイドとしして、作成の視点をいくつか紹介します。

(1)経営理念を起点にする
従業員の経営理念に対する共感度が高い企業であれば、1-4の三井金属鉱業の事例のように、経営理念を起点にマイパーパスを作成する方法が有効でしょう。それによって、2-2で示したような自社の経営理念と従業員のマイパーパスの重なりが実現しやすくなります。

(2)他者貢献と自己実現を調和させる
一般的なマイパーパスの作成を考えるのであれば、「他者のために働く」という他者貢献と、「自分のために働く」という自己実現という2つの視点を意識させることが有効です。他者貢献における「他者」とは、社会、顧客、自社組織などをイメージさせるとよいでしょう。一方、自己実現においては、「自分が何を成し遂げたいのか」という自己実現の目的と、「自分らしくいるために、どのように行動したいのか」という行動スタイルをイメージさせるとよいでしょう。最終的には、他者貢献と自己実現の2つが調和するようなマイパーパスを作成することが望まれます。

 

マイパーパス作成の視点

5-2. マイパーパスを自覚するための「5つの質問」

従業員の中には、マイパーパスの前提となる「自分らしさ」が自問自答してもうまく表現できない人がいるかもしれません。そこで、従業員がマイパーパスを自覚するためのヒントとして、5つの質問を示しておきます。

マイパーパスを自覚するための「5つの質問」
質問1:「自分が得意なことは何か」
質問2:「何をしているときに、自分で楽しいと感じるか」
質問3:「自分の何がいちばん役に立っていると感じるか」
質問4:「何をしているときに、自分が前進し、成長していると感じるか」」
質問5:「どのような関係の相手と仕事をすると、自分のやりがいを感じるか」

(出所)ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ]『働くことのパーパス』ダイヤモンド社(2021年)

従業員本人が自問自答する以外に、研修・ワークショップ、キャリア面談などでも活用できます。

以上、エンゲージメント向上、生産性向上、自己成長促進といった観点から、マイパーパスのいきいき組織づくりへの貢献について述べてきました。

あなたの会社も従業員のマイパーパスを明らかにしませんか。

(著者:タンタビーバ パートナー 園田 東白)

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