(1)経営者のリーダーシップおよび経営理念
経営者のリーダーとして尊敬できる行動の「率先垂範」や、共感できる経営理念(パーパス、ビジョン、ミッション、バリュー等も含む)の存在が、従業員の働きがいを高めます。特に中小企業の場合、経営者の行動・考え方が従業員に与える影響は大きく、エンゲージメントを推進するうえで、まず検討すべき項目でしょう。
(2)組織文化
例えば、「挑戦を奨励し、実現させる組織文化」は従業員の働きがいを高めます。あるいは「助け合う組織文化」、「お互いを尊重する組織文化」、「何でも安心して話せる職場(心理的安全性)」は従業員の働きやすさの向上に寄与します。組織文化の醸成・浸透で大きな役割を果たすのがミドル・マネジメント層です。身近な上司の行動習慣が日々のコミュニケーションなどを介して若手社員等に伝播していきます。
(3)職場の人間関係
従業員を「家族」のように位置づけるのであれば、従業員同士の人間関係はエンゲージメントに大きく影響します。人間関係のベースはお互いをよく知ることです。よく知るためには、会話量を増やすことが大切です。そのためは、誰とでも気軽に雑談できたり、自分の考えを率直に述べることができるオープンなコミュニケーション環境の整備や、1-3で述べた「和の精神」が求められます。
(4)仕事
仕事自体の面白さや、仕事の達成感などが働きがいを高めます。この場合、実際の仕事内容のみならず、従業員本人の仕事の受け止め方も影響します。同じ仕事内容であっても、それを「面白い仕事」とポジティブに受け止める人と、「面倒な仕事」とネガティブに受け止める人がいます。これをエンゲージメントと関連づけると、エンゲージメントが高い人ほどポジティブに受け止める傾向が強いのではないかと推察します。これを踏まえると、仕事の充実がエンゲージメントを高めるのみならず、エンゲージメントの高さが仕事を充実させる面もあるといえます。また、仕事を個人レベルのみならずチームレベルで考えることも大切です。チームとして1つの課題に取り組む面白さや、チームで成し遂げる達成感も働きがいにつながります。
(5)キャリア・成長
①キャリア
「これまでこの会社で自分が望むようなキャリアを歩めているか」、「これからこの会社で自分が望むようなキャリアを歩むことができるのか」というキャリアに関する過去・未来の評価がエンゲージメントに影響します。これまでは「会社がキャリアを決める」側面がありましたが、既に「従業員本人が自らのキャリアを決める」時代に突入しています。現在の会社に自分の望むキャリアを見出すことができなければ、他社にそれを求めることが当たり前の時代です。だからこそ、従業員の外部流出を防ぐエンゲージメントが必要となります。定期的にキャリアに関する面談を行い、本人が望むキャリアと現在・将来の仕事をうまくリンクさせることが大切です。
②成長
また、「この会社で自分は成長できている」という成長実感もキャリアの評価に影響します。定期的に業務の振り返りの場を設け、仕事経験から学び、成長していることを本人に自覚させることが大切です。また、業績目標とは別に学習目標(成長目標)を設けると、より仕事経験からの学び・成長を意識しやすくなります。
(6)職場環境・就業条件・公正な評価・福利厚生など
ワークライフバランスへの配慮、労働時間の短縮化、休暇取得の促進など働き方改革の推進は、エンゲージメント向上に直結します。賃金への納得感、公正な人事評価、福利厚生の充実なども「認められている」、「大切にされている」というポジティブな心理状態につながり、エンゲージメントの向上につながります。
これらの要因をもう少し掘り下げることで具体的施策が見えてきます。大切なことは、自社の強み・魅力・実情などを踏まえて、実体を伴う施策を講じることです。